大学校及び設置科 北海道職業能力開発大学校 建築科
課題実習の前提となる科目または知識、技能・技術 安全衛生工学、建築構法、構造力学?・?、建築材料?・?、構造設計?・?・?
課題に取り組む推奨段階 構造力学?・?終了後
課題によって養成する知識、技能・技術

鉄筋コンクリート部材における補強鉄筋とコンクリートとの応力分担の機構とコンクリート、鋼の材料特性を知ります。同時に、鋼構造設計法、設計図面と鋼部材の切断・穴開け・溶接の加工技術法などの応用力を身につけます。

製作の目的と概要

地震時に鉄筋コンクリート部材は荷重を担って、そこに、曲げ、せん断などの応力モード下でひび割れが発生します。鉄筋コンクリート部材は、コンクリートのひび割れによって応力負担能力が無くなることを鉄筋が補う機構のものですが、地震時のように水平外力が卓越して構造物に作用するせん断モード下では、補強鉄筋の存在によるダボ効果によって、鉄筋コンクリート部材の耐力性状を低減させる場合1)2)もあるようです。これまで多くの大掛りなダボ試験例が報告されていますが、未解明なダボ作用が未だ残されています。
本総合制作実習では、鉄筋コンクリートのひび割れ面のダボ試験を構想し、図1のコンパクトな「逆対称2点載荷装置」を設計・製作します。
鋼構造計算より、逆対称2点載荷装置の側板や可撓ストラップなどの材質と諸元寸法を定め、ひび割れ面の幅の形成をコントロールするターンバックル、側板を繋ぐL型鋼、加力・反力用のH型鋼の許容応力設計による安全性能の確認を行います。そして、模型による検討を踏まえ、実機を作製することにします。

参考文献
1)Bazant, Z.P. and Gambarova, P : Rough Cracks in Reinforced Concrete, Journal of the Structural Division, ASCE, Vol.106, ST4, 1980.4
2)Millard, S.G. and Johnson, R.P.:Shear Transfer across Cracks in Reinforced Concrete due to Aggregate Interlock and Dowel action, M. of Concrete Research, Vol. 36, No.126, 1984.4

成果

図2に「逆対称2点載荷装置」の模型を掲げました。
学生自らが、載荷装置に作用する荷重を設定し、使用構成材の材料性状、これに従った各許容応力度を下記?〜?の手順で定めました。
?部材諸元寸法の設定?引張・圧縮・せん断による応力検討とはり理論による曲げ応力検討?たわみ量の制限?模型作製のよるクリアランスや取り合いの検討?接合法の検討?再設計
実際に学生自身が、1年間かけ試行とチェックを繰返し、実機の作製については、専門加工業者と綿密な部品検討を幾度なく繰返しています。
 学生は、ものづくりの構想・設計・作製の一連のワーキングを実感し、当初の設計目標を達成しました。
鉄筋コンクリート部材のダボ挙動実験装置の設計・開発(H22)の画像1
図1 加力装置のアイソメ図
鉄筋コンクリート部材のダボ挙動実験装置の設計・開発(H22)の画像2
図2 加力装置の模型