大学校及び設置科 近畿職業能力開発大学校 産業化学科
課題実習の前提となる科目または知識、技能・技術 有機化学、有機工業化学、重合反応、材料、機器分析、IR測定、安全衛生
課題に取り組む推奨段階 有機化学実験、有機工業化学及び機器分析の実習終了時
課題によって養成する知識、技能・技術

課題を通して、高分子合成技術、及び得られた物質の分析、物性測定技術を養成する。

製作の目的と概要

 本課題では、CO2排出による温暖化や化石燃料の枯渇により関心が集まっているバイオマスを利用したポリマー原料(前駆体)とそれを使用した生分解性ポリマーの合成を目的としました。バイオマスとしてセルロースに着目し、セルロースの水酸基に重合可能な基を有する化合物を反応させて変性し、この変性セルロースと重合性化合物(アクリル系モノマー)とを共重合させてプラスチックとなるポリマー合成する手順で、以下の点を目標として検討を行いました。
・変性セルロースが、アセトンや酢酸エチルなどの汎用溶剤に溶解すること。
・ラジカル重合が可能であること。
・汎用樹脂(ポリメチルメタクリレート、ポリスチレン等)程度の強度を有すること。

成果

(1)変性セルロース
酢酸セルロースの製造法を利用し、無水酢酸と重合性化合物(アクリル酸)の混合物を濃硫酸の触媒としてセルロースに反応させる方法で検討し、無水酢酸とアクリル酸の最適組成比を検討し、アクリル酸で変性した酢酸セルロースを合成しました。得られた変性体は、白色粉末でアセトンに可溶でした。

(2)ポリマーの合成
変性セルロースとメタクリル酸メチル(以下、MMAと記載)をアセトン中でラジカル重合し、変性セルロースが重合することを確認しました。重合中のゲル化を避けるために変性セルロースとMMAとのオリゴマーを合成し、このオリゴマー溶液中でMMAを重合することで変性セルロースを含むポリマー溶液が得られました。このポリマー溶液を加熱・脱溶剤することで図2に示すようなポリマー(固体)が得られました。このポリマーの硬度は硬質塩ビ並みでしたが、破断強度は汎用樹脂に比べて低く、この点については架橋剤(イソホロンジイソシアネート)で架橋することで脆さはかなり改善されることが判りました。生分解性については確認できませんでした。
アクリル変性セルロースとそのポリマーの合成(H19)の画像1
図1 変性セルロース
アクリル変性セルロースとそのポリマーの合成(H19)の画像2
図2 セルロース系樹脂
S