能力開発データベース

■能力開発技法

プロジェクト法





概要 特徴と効果 実施の手順 実施・開発上の留意点

■概要

受講者を5〜6人のグループに編成し、課題となるプロジェクトを与えて、その計画(PLAN)から実施(DO)を経て評価(SEE)に至るまでを、一貫して体験させる研修技法です。

例えば、新入社員研修のときに、受講者たちに、「次の年に当社へ就職を希望する学生たちのための会社案内パンフレットを作成せよ」というようなプロジェクト(課題)を与えて取り組ませます。

課題形式のプロジェクトを与えて、それぞれのメンバーの分担と協力によって、つまりチームワークによって、プロジェクトの達成に取り組ませるやり方をプロジェクト法といいます。


■特徴と効果

企業活動におけるプロジェクト・チームとほぼ同様のことを研修の場面で模擬的に体験させるのが、この技法の特徴です。

したがって、プロジェクト・チームの遂行に必要とされるものと同様の多面的な能力が必要とされ、企業活動に要求される能力の効果的な向上を期待することができます。

向上が期待される能力のうち、知的な側面としては、情報収集能力、理解力、分析力、構想力、表現力、創造性(創意工夫の能力)など、いわば知的な情報処理や問題解決の能力の向上が期待できます。
態度や行動の側面としては、チームワークに必要とされる能力、すなわち、協調性、積極性、対人関係能力、傾聴能力、自己主張や自己表現の能力などの改善・向上を期待することができます。

また、集団活動の過程で、メンバー同士の相互交流や相互作用によって、互いに好ましい刺激を交換し合い、集団活動の楽しさを味わいながら、内的な動機づけを高めることも期待できます。


■実施の手順

プロジェクト法のステップは、次の通りです。

  1. グループの設定
  2. プロジェクトの設定
  3. プロジェクト遂行の計画づくり
  4. プロジェクトの遂行
  5. 中間チェック
  6. プロジェクトの評価
  7. 学習の確認
まず、グループが取り組むべきプロジェクトを設定します。プロジェクトの設定は受講者たちが自分たちで設定する場合もありますが、通常は主催者側が用意します。

プロジェクトが決まったら、グループはプロジェクトを遂行するために必要な計画を立案します。会社案内を制作する場合の例でいえば、ページ数の決定、ページごとの内容や割り付け、必要な作業のリスト・アップ、作業の分担、作業遂行予定表の作成、中間チェックの日程などを策定します。

そして、それぞれのメンバーが分担して作業を進めていきます。途中で中間チェックをして、必要があれば作業や分担の修正をします。終始、チームワークや衆知結集が求められ、ブレーン・ストーミングKJ法などの創造性開発技法が頻繁に活用されることになります。

各グループの準備が整ったところで、全体発表会を行います。もちろん、発表会の日程はあらかじめ決めておきます。順番を決めて、グループごとに発表し、質疑や討議を重ねて、最後に評価を実施します。投票などで順位を決めるやり方がよく行われています。
評価の基準や評価の方法は、発表会の始めに設定しておきます。評価の項目としては、独創性、効果性、魅力度などの項目が用いられます。評価の方法としては、受講者が3点、2点、1点などの持ち点(点数)を自分たちのグループを除いた他のグループに対して投票します。その合計得点の高い順に順位をつけて優劣を決めていきます。
上位グループを表彰をするなど、競争の原理を併用すると、発表会の雰囲気が盛り上がります。

最後に、一連のプロジェクト活動の体験を通して、それぞれのメンバーがどんなことを学習したかを確認し合って締めくくります。

■実施・開発上の留意点

プロジェクト法を効果的に進めていくためには、プロジェクトの設定が重要なポイントになります。

どのグループにも同じプロジェクトを設定するやり方と、いくつかのプロジェクトを用意してグループごとに割り当てるやり方とがあります。後者のやり方をする場合、受講者に希望するプロジェクトを申告させて、同じ希望者同士でグループを編成することもできます。

たとえば、企業戦略策定をテーマとした研修会などで、新製品開発、物流戦略、営業組織戦略、マーケット・シェア、情報システム、企業倫理、高齢化問題などの課題形式のプロジェクトを提示して、希望するプロジェクトを選定させて、同じ希望者同士でグループを編成するようなやり方です。

プロジェクト法を実施するときには、途中の達成活動(プロセス)に対して主催者側がどのように関わるかという問題も大きなポイントになります。

受講者の意欲や態度とも関係する問題です。全面的に自由にまかせるのも一つのやり方ですが、途中で中間チェックを義務づけて、その機会に、作業の内容だけでなく、チームワークのあり方、つまりメンバーの態度や行動などについて反省討議をさせるのも、場合によっては効果的なやり方となります。
なお、反省討議については、「クリティーク」の項を参照してください。