能力開発データベース

■能力開発技法

KJ法





概要 活用の仕方 運用上の留意点

■概要

日本の文化人類学者川喜田二郎氏(元東京工業大学教授)が考案した創造性開発(または創造的問題解決)の技法で、川喜田氏の頭文字をとって“KJ法”と名付けられています。

ブレーン・ストーミングなどで出されたアイデアや意見、または各種の調査の現場から収集された雑多な情報を1枚ずつ小さなカード(紙キレ)に書き込み、それらのカードの中から近い感じのするもの同士を2、3枚ずつ集めてグループ化していき、それらを小グループから中グループ、大グループへと組み立てて図解していきます。こうした作業の中から、テーマの解決に役立つヒントやひらめきを生み出していこうとするものです。

KJ法は、もともと川喜田二郎氏が文化人類学者としての自分自身の学術調査のデータをまとめるため、および、調査団のチーム作りのために考案したものですが、その後、川喜田氏自身および周囲の研究者たちの協力によって、さまざまな発展型を生み出しています。


■活用の仕方

KJ法の基本的な手順は次の通りです。

  1. カードづくり − 情報収集のステップ

    「探検」と呼ばれます。探検には、外部探検と内部探検とがあります。 外部探検とは、様々な目的による調査の現場で情報や事実を収集することです。内部探検とは、関係当事者の頭脳の中を探検することであり、各自の頭脳に蓄えられた知識や経験をブレーン・ストーミングなどによって吐き出すことです。

    収集された情報は1つ1枚ずつ、小さな「カード」に書き込んでいく。この段階を「カードづくり」といいます。

     KJ法のステップ

    1. カード(紙キレ)づくり
    2. グループ編成
      @ カードひろげ
      A カードあつめ
      B 表札づくり
    3. 空中配置
    4. A型図解
    5. B型文章化

  2. グループ構成

    カードのグループを編成していく作業で、さらに次のようなステップに分けて進めていきます。

    1)カードひろげ
    カード群を机の上などにディスプレイして、1枚1枚のカードに書かれた内容を丹念に読みとっていく。カードの心に聞き、カードが言わんとする言葉の奥を汲み取る。

    2)カードあつめ
    @近い感じのカードを集める。
    Aほんの2、3枚ずつ。
    B離れザル、一匹狼は無理にどこかへ入れない。
    Cあわてず、ゆっくり、息の長い根気で。

    3)表札づくり
    @カードのグループに「表札(タイトル)」をつける。
    Aカードたちの心をぴたりと言い表す。
    Bソフトでズバリの表現で。
    C元の言葉の土の香りを残す。
    D表札は新しいカードに赤字や青字などで書く。
    E色分けして書き、クリップや輪ゴムで束ねていく。
    Fカードのグループは、まず小グループを作り、次に小グループ同士で中グループを、そして中グループ同士で大グループを作っていく。 製品の組立てと同じように、まず小さなパーツをつくり、パーツを組立ててユニットへ、さらにデバイス(完成品)へと組立てていくのである。

  3. 空間配置

    中グループや大グループへと組立てられて、クリップや輪ゴムで束ねられたカードの束を模造紙などの上で空間的に配置をして、姿・形をもったものにしていきます。
    @内容の近い束を近くへ。
    A「目的と手段」「原因と結果」などの“ストーリー”をつぶやきながら進める。
    B徐々に輪ゴムやクリップの束を解き、“腹わた(カード群)”を出していく。

  4. A型図解

    輪どりや棒線などでグループ同士の関係を表示し、全体が姿・形を持った図解となるようにしていきます。

  5. B型文章化

    @A型図解を元にして論文や記事などに文章化していく。
    A「B’型」として簡略化して口頭で発表説明する。
    BGBS(グラフィカル・ブレーン・ストーミング)として、図解を土台に再度ブレーン・ストーミングを実施し、発想を発展させていくこともある。


■運用上の留意点

KJ法は、次のような使い方をすると効果的である。

  1. 問題の正体がはっきりしない時。それを明確化する。
  2. 問題はもやもやしたままでもよいから、とにかく紙切れに書き出していく。
  3. 周辺情報を幅広く収集する。
  4. カード化された情報は、バラバラなままディスプレイする。
  5. バラバラなカード群の語りかけを素直な気持ちで聞き取っていく。
  6. バラバラな情報群の中から、次第に紙切れたちが集まってきて、問題が形成され、構造化されるように思考する。
  7. 構造化された問題から解決策を考える。
  8. グループで取り組むことによって、衆知結集の効果や、チーム作りの効果を期待できる。

■川喜田 二郎

東京工業大学名誉教授、日本ネパール協会会長、川喜田研究所名誉顧問。 専門は、民族学、文化人類学、KJ法。
大阪市立大学、東京工業大学各教授を経て、昭和59年3月まで筑波大学教授。のち日本ネパール協会会長、ヒマラヤ技術協力会代表理事などをつとめる。また、カロリン群島、西北ネパーネ等の学術探検を行なう。59年8月、ネパールの山村での生活改善運動の功績により、アジアのノーベル賞といわれているマグサイサイ賞受賞。KJ法の創始者であり、日本能率協会の経営技術開発賞も受賞。

前に戻る