能力開発データベース

■能力開発技法

クリティーク





概要 特徴と効果 活用の仕方 実施・開発上の留意点

■概要

グループによる研修活動の一区切りのことを「セッション(会合、時限)」といいますが、ひとつのセッションが終了したあとで、そのセッションのことを振り返って討議、検討するというやり方のことを「クリティーク(Critique:批評)」、「クリティーキング」あるいは「ふりかえり」といいます。

「ふりかえる」対象は、グループ活動の中でのメンバーの発言内容や結論など、いわばグループ活動の「中身(コンテンツ)」ではなく、グループの雰囲気やグループ活動に取り組んでいるメンバーの態度や姿勢についてに重点が置かれます。

グループ活動には、大きく分けて二つの側面があります。

一つは、テーマや結論や発言内容など、いわば討議の中身(コンテンツ)であり、もう一つは、討議に臨んでいるメンバーの感情や態度や、それらが混ざり合って作り出されるグループ全体の雰囲気です。

コンテンツに対して、こちらは「プロセス」といいます。グループが変化し、発展し、成長していくプロセス(変換過程)という意味です。

この「プロセス」について、グループ自身が気づき、成長を深めていくようにガイドするのがクリティークのねらいです。


■特徴と効果

グループによる研修活動のひとつのセッションが終了するごとに、ひんぱんにクリティーク(振り返り)を繰り返します。この繰り返しによって、グループのメンバーたちは、次第に自分たちのグループ活動の姿や様子(つまり、プロセス)に対して敏感になっていきます。

グループは、今、どんな状況か、自分たちはどんな姿勢で研修活動に取り組んでいるか、自分自身はどんな気持でいるか、ほかの仲間はどうか、こうした点について、“気づき(洞察)”を深めていきます。そして、この気づき(洞察)の深まりが、グループの雰囲気をだんだんと好ましいもの、研修活動にふさわしいものに成熟させていきます。


■活用の仕方

クリティークは、リーダーシップの向上や職場の活性化など、個人の行動変容や組織風土の改善を目的とした研修において、研修の日程のなかに取り入れることができます。

何回かのグループワークを反復、継続して体験していく場合に、そのグループワークの区切りで、それまでのグループワークのあり方について、自分たちでふりかえって検討し、次のグループワークの改善に役立てていくような方法で活用します。

クリティークの活用の仕方としては、評定尺度法や意味尺度法を応用すると便利です。

  1. 評定尺度法
    7項目くらいの評定要素(評価項目)を設定して、5〜7段階の評定尺度を決めておくやり方である。
    @グループ・メンバーの一人ひとりが自分なりの判断で、 自分たちのグループの特徴や傾向について評価する。
    A1番から7番までの各項目について、評定尺度の中で 最も当てはまると思う評点の箇所に○印をつける。
    B評価の基準は、7段階の場合は、4が「どちらともいえない」、7が「非常によい」、1が「非常に悪い」ということになる。
    C各自がつけた評点を持ち寄って、なぜそういう点を付けたかなどを話し合い、グループ活動のプロセスを振り返りながら、全員が合意できる統一評点を決めていく。



    <図表:評点尺度法・評価表例>

  2. 意味尺度法(セマンティック・ディファレンシャル、略してSD法)
    あるもののイメージ(たとえば、グループのイメージ)をとらえるのに、「明るい−暗い」「暖かい−冷たい」などのように、相反する形容詞を両極において、そのものの実際のイメージが両極の間のどの辺に位置づけられるかを心理的に評定しようというものである。



    <図表:意味尺度法・評価表例>


■実施・開発上の留意点

同じグループの中で同じ活動を体験しても、各人によって各様の受け止め方があることを知ることが基本です。

各人各様の受け止め方のずれは、「ふりかえり(クリティーク)」というやり方で、数字で表示してみると、判然としてきます。

もともと、人間には個性があり、ものごとを認識するパターンも違うし、発想のパターンもさまざまです。これは、その人の“望みの高さ”が違うことに起因します。このような望みの高さのことを「期待水準(または要求水準、アスピレーション・レベル)」といいます。

同じグループ活動を体験しても、期待水準が高いか低いかによって、クリティークの得点が甘くなったり辛くなったりします。

これをクリティークの中で話し合ってみると、メンバー同士のものの見方や考え方がすりあわされ、互いに混ざり合って、次第にグループとしての統一された見方や考え方、いわば“集団の気風”のようなものが形成されていきます。

このようなグループの気風を研修活動にふさわしい相互啓発的なものにガイドしていくのがクリティークのねらいです。