能力開発データベース

■能力開発技法

ブレーン・ストーミング






概要 特徴と効果 実施の手順 実施・開発上の留意点 その他

■概要

ブレーン・ストーミングとは、1938年(昭和13年)頃、当時、アメリカの広告代理店BBDO社の副社長をしていたアレックス・F・オズボーンが考案した創造性開発のための技法です。


一言でいえば、何人かが集まり、あるテーマをめぐって、既成概念にとらわれず、自由奔放にアイデアを出し合う会議形式の一種です。オズボーンによれば、“ブレーン(頭脳)で問題にストーム(突撃)すること”です。


■特徴と効果

ブレーン・ストーミングには次のような効果が期待できます。

  • ある特定の問題に対して、何らかの解決策を手に入れることができる。
    これは直接的な効果であり、ブレーン・ストーミングではこのような直接的な効果をねらいとして実施されるケースも多くみられる。

  • 参加メンバーの創造的問題解決能力(つまり創造性)が開発される。
    ブレーン・ストーミング独特の創造的な雰囲気を何回か繰り返して体験することによって、参加メンバーたちは、知らず知らずのうちに、創造的な態度や思考を体得していくことができる。

  • チームワークが強化される。
    同じメンバーが数回のブレーン・ストーミングを継続して体験することによって、チームとしての結束が固まり、一体感や仲間意識が強くなるという効果が期待できる。

■実施の手順

ブレーン・ストーミングは、通常6〜7名のグループで実施します。4つのルールが決められており、会議に参加するメンバー(ストーマーと呼ばれることもある)は、このルールに従わなければなりません。

  1. 自由奔放
    (奔放な発想を歓迎し、とっぴな意見でもかまわない)
  2. 批判厳禁
    (どんな意見が出てきても、それを批判してはいけない)
  3. 量を求む
    (数で勝負する。量の中から質の良いものが生まれる)
  4. 便乗発展
    (出てきたアイデアを結合し、改善して、さらに発展させる)

このルールを確認した上で、つぎのような手順で進めていきます。

@課題の設定
取り組むべき課題を設定する。
A役割の決定
リーダーと記録係を決定する。
B発散思考
リーダーの指示に従い、次々に、自由奔放に、 アイデア、意見を出し合う。
C収束思考
記録をもとに、分類、補足する。
D発散と収束の繰り返し
E評価
実現可能性や重要性、効果性などの観点から 出されたアイデアを評価する。
F具現化
評価後のアイデアの具現化策を考える。


■実施・開発上の留意点

  • テーマによっては、ブレーン・ストーミングに向くものと向かないものがある。

  • あまり向いていないテーマとしては、「○○は導入すべきか、否か」とか、「△△の採用はプラスかマイナスか」とか、「××は是か非か」というように、ただ一つの解答や結論を求める問題である。

  • ブレーン・ストーミングに向いているテーマとしては、「…するには、どうしたらいいか」という形で表現できるものであって、解決策がたくさん出てくる可能性のある問題である。たとえば、次のようなテーマである。

    • 品質の安定化を図るには
    • もっと提案が出るようにするには
    • 共有工具の整理整頓をよくするには
    • 機械の休止期間を短くするには
    • 活気のある職場をつくるには
応用型


メンバーがブレーン・ストーミングに慣れていないと、発言が片寄ったり、ほとんど発言しない人も出てきます。そういう場合には、次のようなブレーン・ストーミングの変形を利用すると便利です。

  1. 順番方式
    各メンバーにメモ用紙を配って、発言する前に、5分か10分位、思いついたことをメモ書きしてもらい、それを順番に発表していく方式。意見の出方が不十分だったら、こういうやり方を何回もくりかえせばよい。

  2. 紙キレ方式
    「スリップ・ライティング」ともいう。スリップとは紙キレのことで、要するに、意見を口頭で発表する代わりに、一つひとつの紙キレ(スリップ)に書いていくのである。

  3. 欠点列挙法
    後ろ向きのブレーン・ストーミング。テーマとして取り上げたものや事柄について、欠点と思われることを、思いつくままに、自由奔放に列挙していく。問題点を見つけだすのに便利である。


発展型

  • カードBS

    上記の紙キレ方式が発展し、技法として確立したものが、カードBSです。

    カードを使ったブレーン・ストーミングのことをカードBSといいます。 ブレーン・ストーミングをするときに、意見を口頭で発表する代わりに、1つ1つ、カードに書いていきます。また、メンバーの全員が一堂に集合しにくいとき、全員にテーマを伝え、記入したカードを回収して、皆の意見を集めるやり方として応用することもできます。

    カードBSは、数人のグループではなく、一人で、単独で実施することもできます。これをソロBSといいます。ソロ(1人)によるカードBSは、いつでも、どこでも、好きな時に、好きなテーマで実施できます。オフィスの机上はもちろん、書斎、喫茶店、電車の中でもできます。職場の問題にかぎらず、家庭生活やボランティア活動など、応用範囲も広く、便利な技法です。


  • ゴードン法

    新製品開発コンサルタントのウィリアム・ゴードンが、ブレーン・ストーミングをヒントにして、新製品開発のための技法として考案したものです。

    基本的にはブレーン・ストーミングと似ていますが、次の2点で大きな違いがあります。

    • 一つは、参加メンバーに本当のテーマを知らせないことです。これは、発想を飛躍的に拡げるための工夫によるものです。

    • もう一つの特徴は、テーマを抽象化して提示することです。これも発想を飛躍的に拡げるための工夫によるものです。

    たとえば、新しい缶切りの開発のときは「あける」という抽象的なテーマにします。あるいは、新しいオモチャのときは、「楽しむ」、新しいプロジェクターの開発のときは「説得する」などといった要領です。

    参加メンバーは狭い固定観念にとらわれずに自由奔放に発想を飛躍させていき、画期的な新製品開発を成し遂げようとするものです。

■その他


<発想のための予備訓練>

アイデアとは、何かの問題の解決に役立ちそうな観念、考え、思いつき、着想のことです。アイデアは、思いがけないときに、たとえば、朝、目が覚めた直後などに、アイデアの方からやってくることもありますが、やはり、出そうと努力しなければ、なかなか出てこないものです。

アイデアを出すときには、ちょっとしたコツのようなものがあります。あまり固くならずに、リラックスして、思いつくままに、できるだけたくさん、頭の中のブレーキをはずして、アクセルだけをどんどんふかせて、質より量で勝負することです。

ウォーミングアップとして、たとえば、「コップの使い道」というテーマでアイデアを出してみるならば、次のような答えがあげられます。ぜひ、やってみていただきたい。

  • 花ビン
  • ハシ立て
  • ペン立て
  • ローソク立て
  • 置き物
  • 円を描く
  • メダカを飼う
  • 音を出す(楽器)
  • 計量カップなど

<アイデア整理の方法>

  • クロス法

    ブレーン・ストーミングなどで出てきたアイデアや意見を整理したり図解したりする技法としては、KJ法や親和図法などがありますが、クロス法もそうしたデータ整理の技法の一つです。

    クロス法は、正式にはセブン・クロス(7×7)法といい、アメリカのビジネス・コンサルタントのカール・グレゴリーが考案した技法です。また、このセブン・クロス法をヒントにして、わが国の創造性開発コンサルタントの高橋誠氏が新しく開発した技法を指して、単にクロス法と呼ぶこともあります。

    グレゴリーのセブン・クロス法とは、ブレーン・ストーミングなどで出てきた意見を小さなカードに書いていき、まず、それを大きく7項目に分類します。次に、その7つの大項目を重要度合に応じて左から右へ順に並べていきます。また、各項目の中でも重要度合を評価して、カードを7項目ずつに整理して上から下へ並べていきます。つまり、ヨコに7項目、タテに7項目ずつ、合計49項目に整理して一覧表にするわけです。ゼブン・クロス法という名前は、これに由来します。

    このように一覧表に整理してみると、出てきた意見の全体像が一目で把握でき、しかも重要な項目が左の上に集中していることで、何が課題であるかを判然と読み取ることができます。

    高橋誠氏のクロス法は、基本的にはこのセブン・クロス法と同様ですが、項目の分け方や順位のつけ方、整理の仕方などに工夫がなされています。