能力開発データベース

■能力開発技法

フィッシュ・ボウル





概要 特徴と効果 実施の手順 実施・開発上の留意点

■概要

「フィッシュ・ボウル(金魚鉢)方式」または「ポッポッポ(POPOPO)方式」と呼ばれます。

グループの活動を中心にして研修が展開されているとき、あるグループ(たとえばAグループ)ともう一つのグループ(たとえばBグループ)とがペアを組んで、グループ同士で相互に啓発しながら進行する技法です。 互いに相手グループの活動の様子を観察して、観察の結果など相互にフィードバックすることによって、グループ活動やコミュニケーションの把握能力を高めることをねらいとして行われる技法です。

金魚鉢の中の魚たちと、それを外から眺めている(観察している)人たちとの姿からの連想で、このように名づけられています。
また、POPOPOのPとは、パーティシパント(Participant)、Oはオブザーバー(Observer)の頭文字です。パーティシパント(参加者)とオブザーバー(観察者)とが相互に役割を交代しながら実習が進められていくことから、このように呼ばれています。


■特徴と効果

フィッシュ・ボウルにはクリティークと同様に、次のようなねらいがあります。

  • グループの気風・規範や、それを形成しているメンバーの態度・行動についての「気づき(自覚、洞察)」を深めることにある。

  • グループ同士で相互にフィードバックしあうことによって、他者の言動に対して率直にフィードバック(指摘)するときの効果的なやり方、および他者からフィードバックされたときに、謙虚にそれを受け止めるやり方を学習することも大きなねらいである。


■実施の手順

フィッシュ・ボウルの実施のステップは次の通りです。

@ 二つのグループ(たとえば、AとB)がペアを組む。

A

一つのグループ(たとえばAグループ)が内側になり、もう一つのBグループが外側になって、二重の円陣を組む。
B内側のAグループが討議を行い、外側のBグループがその様子を観察する。
C討議のテーマは「わがグループを語る」である。
D 時間は10〜20分。
E 自分たちのグループの特徴や傾向について、自分たち自身が、どう感じ、どう認識しているかを討議しあう。
F 外側のグループは、討議の様子をよく観察する。
G メンバーの発言内容(コンテンツ)よりも、話し合っている時のグループの雰囲気やメンバーの態度、行動に注目する。
H Aグループの討議が終了したら、内側と外側のグループが入れ替わる。
I 今度は、Bグループが討議し、Aグループがこれを傾聴する。
J Bグループのテーマは「相手グループを語る」である。
K 時間は同じく10〜20分。
L Aグループは、途中で反論したり、意見を言ったりすることはできない。少なくとも、相手グループの目にそのように映ったのは事実であり、そのことを謙虚に受け止め、自分たちのグループを見直す姿勢が大切なのである。
M つぎは、A,B立場を変えて同じ事を繰り返す。


■実施・開発上の留意点

私たちは、他人の言動に対して、批判がましいことは言いにくいものです。たとえ教育研修の中であるとはいえ、グループのメンバーの態度や行動についてアドバイスせよと言われても、ためらいや抵抗感を抱くのも無理はありません。

一方、私たちは、自分自身のことについて、他人から指摘されないと気づかないことも多いものです。フィッシュ・ボウルの実施にあたっては、次のような点に留意が必要です。

  • フィッシュ・ボウルでの討議は、グループ同士の相互批判を奨励しているのではなく、集団を見る目を深く養うためのものである。

  • 相手グループを鏡にして、相手グループの目に映った自分たちのグループの状況を理解・洞察することを訓練するのが目的である。 このことを受講者全員に徹底することが重要である。

  • フィッシュ・ボウルでは、このような率直な相互啓発への機運を促進していくことが大きなねらいである。

  • 個人から個人への指摘となると、抵抗感が強いかもしれないが、グループからグループへ、という形になっているので、抵抗や衝撃は緩和される効果がある。