能力開発データベース

■能力開発技法

読書研究法





概要 特徴と効果 活用の仕方 実施・開発上の留意点

■概要

昨今の情報量の増加は著しい伸びを示しています。グループを編成し、チームの力を利用して、課題(読書)に取り組み、相互啓発を高めることを読書研究法といいます。

古くから行われている「輪読」というやり方を応用したもので、数人でグループを編成し、ある図書を選定してそれぞれのメンバーが各自の解釈や意見を述べ合うことによって、内容の理解を深めていこうとするやり方です。


■特徴と効果

読書というのは通常は自己啓発のための手段となるものですが、グループで取り組むことによって相互啓発の効果を生み出し、次のようなメリットを期待することができます。

  • 複数の視点によって解釈の幅を広げることができる
  • 仲間に刺激されて学習への意欲が高まる
  • 一人で読むよりは長続きしやすい
  • さまざまな価値観に接して視野が広がる
  • 仲間作りができ、グループ活動の楽しさを味わうことができる
  • 費用はあまりかからない

■活用の仕方

読書研究法は、次のような手順で進めていきます。

  1. グループで取り組むべき図書を選定します。

  2. 会合の日時・会場を設定して、それまでに各自が通読します。軽い読み物であれば、1冊全体を、重厚な図書の場合は各章に分割して、順次、研究会を進めていきます。

  3. 各自が「所見」を書面にまとめておきます。
    「要約および所見」としてもよいでしょう。内容や形式を標準化して、定型の記入用紙を設定しておく場合もあります。

  4. 発表会で発表し合い、全員で討議します。

  5. 理解できない個所があれば質問して、他のメンバーの解釈を聞きます。複数の解釈を聞くことによって、各自の解釈の幅を広げていきます。

  6. 納得できない箇所や、著者の論点や主張に対して反対意見を持っている場合は、それらの意見を出し合って討議します。

  7. 討議では必ずしも意見を一致させる必要はありません。

  8. 発表会を進める上での注意点は、通常のミーティングの進め方とほぼ同様です。


■実施・開発上の留意点

  1. 読書研究法を実施するときには、@図書の選定がポイントになります。Aまた、何のためにやるのか、その目的を明確にしておくことが大切です。B日常の業務との関連も重要です。

    構成メンバーにもよりますが、職場が同じだったり、職種が似ている場合は、かなり専門的な図書が選定できますが、仕事の違うメンバーの場合は、多少、一般的な図書を選定することになるでしょう。

  2. 同じ職場(または関連のある職場)のメンバーで業務に密着したテーマの図書を選定する場合は、QCサークルなどの小集団活動と類似してきます。このような場合は、目的がすでに明確になっており、事務局が効果的にリーダーシップを発揮すれば、研究会の進行は比較的スムーズにいくでしょう。

  3. 職種の違うメンバーで、しかも企業のトップや研修スタッフなどからの働きかけによって読書研究会が設定されたような場合には、メンバーたちが興味や意欲を持続できるように、スタッフからの援助を効果的に進めていくことがポイントになります。

    スタッフのコミュニケーションやリーダーシップのあり方が問われることになり、スタッフにとっても学習のための良い機会となります。