能力開発データベース

■能力開発技法

イメージ・トレーニング





概要 特徴と効果 活用の仕方 実施上の留意点

■概要

楽な姿勢をとり、目を閉じ、呼吸を整え、心身をリラックスさせて、軽い催眠状態になったところで、明るい肯定的なイメージを訓練し、成功のイメージを形成することによって、精神の安定や集中、自己の行動や人間関係の改善、アイディアの発想などに役立てていく技法をいいます。


東洋のヨガや座禅と西洋の催眠術とを融合させて開発されたジェイコブソンの斬新的リラクゼーション法やシュルツの自立訓練法を応用したものです。最近では、運動選手の運動能力の開発にも応用されています。


■特徴と効果

イメージ・トレーニング法を上手に実行できるようになると、次のような効果を期待することができます。

  • 精神を集中する能力(集中力)を高めることができる。
  • 取り組もうとしている学習や課題解決の効率を高めることができる。
  • ストレスを解消して精神を安定させることができる。
  • 軽いうつ病やノイローゼを自己治療することができる。
  • 精神衛生を良好な状態に維持することができる。
  • 自己の性格を改善して周囲の人たちとの人間関係を改善することができる。
  • 柔軟な発想をして独創的なアイディアを生み出すことができる。

■活用の仕方

イメージ・トレーニング法は市販の録音テープなどによって自学自習することもできますが、経験豊かな指導員による適切な手ほどきを受けたほうが効果的でしょう。

イメージ・トレーニング法の進め方は、あらまし次の通りです。

@楽な姿勢をとる。
背もたせのあるイスにゆったりと坐るやり方が普通ですが、座禅の姿勢をとったり、あるいは仰臥(仰向け)の姿勢をとることもある。
Aメガネやイヤリングや時計などを外し、ベルトをゆるめて、ゆったりとリラックスした姿勢がとれるようにする。
B目を閉じて、呼吸を整える。
C息を大きく吸って、ゆっくりと吐き出す。
DCのような深呼吸を5,6回くりかえしたのちに、普通の呼吸にもどる。
E「気持が落ち着いてきている」という自己暗示を与える。
F気持ちが落ち着き、体も心もリラックスしてきたところで、あるイメージを思い浮かべる。
G明るい肯定的なイメージを想起する。
たとえば、波の穏やかな海辺に暖かい陽光が射しているような情景を思い浮かべる。
Hその情景の中に自分がいて、体も心もリラックスしている自分の姿を想像する。
I未来の自分自身の望ましいイメージを思い描く。
J「職場での人間関係が良好になっている」、「自分の提案が上司や同僚に認められている」、「自分の立てた企画が実現して仕事がスムーズに進行している」などの明るいイメージを描く。
Kこのようなイメージ・トレーニングを朝起きた直後と夜寝る直前に実施する。


■実施・開発上の留意点

イメージ・トレーニングを実施するときの留意点は、次の通りです。

  • 服装はトレーニング・ウェアか、禅の僧侶が着る作務衣(さむえ)のような軽装がよい。
  • 時計、メガネ、イヤリング、ブレスレットなど身につけているものは外す。
  • ベルトもゆるめる。
  • 場所は静かに落ち着ける所を選ぶ。
  • 部屋の中は少し暗くしておく。
  • 回数は1日に朝と夜の2回実施する。
  • 所要時間は初めは30分くらいから始めて、慣れてくるに従って、次第に短縮していく。

■シュルツ (J.H.Schultz :1884-1970)

ドイツの精神科医。
注意の集中、自己暗示の練習によって全身の緊張を除き、心と体の状態を自分でうまく調節できるようになることを目的として工夫された段階的訓練法(自律訓練法)を提唱した(1932年)。