能力開発データベース

■能力開発技法

創造性開発技法





概要 特徴と効果 活用の仕方 開発上の留意点 その他

■概要

職場や家庭などの日常生活の中で、いろいろと頭を働かせ、知恵をしぼり、創意工夫をこらして、何ごとかを改善したり、新しいことを考え出したりする能力は、創造性、独創性とか呼ばれます。そして、こうした能力を伸ばすことを「創造性開発」といいます。

創造性開発のための技法としては、ブレーン・ストーミングKJ法などの基本的なもののほかにも、チェックリスト法、強制連関法、焦点法、アナロジー技法など、さまざまな技法が考案されています。 それらの概要は、次の通りです。

[チェックリスト法]

アイデアを発想する時、手がかりとなるチェックリストをもとに行うやり方で、ブレーン・ストーミングの考案者であるオズボーンが作成した 「オズボーンのチェックリスト」と呼ばれる9項目が、その代表です。

[強制連関法(フォースド・リレーションシップ)]

アメリカのチャールズ・ホワイティングが考え出したもので、一見、関連のない二つのものを強制的に関連づけていきながら、アイディアを生み出していくテクニックです。

[焦点法(フォーカスド・オブジェクト・テクニック)]

強制連関法の一種であり、関連のない二つのものを強制的に関連づけていく点では同じですが、進め方が系統的で複雑です。

[アナロジー技法]

アナロジーとは、類推のことであり、この類推の原理がアイディアの発想に役立ちます。
すでに知っている知識を応用して、似たような新しい事柄について、「多分そうではないか」と推しはかることにより、ヒントが得られやすく、アイディアが生まれやすいと考える方法です。

[等価変換法]

創造性開発の技法の一つで、異なる二つのもの(たとえばAとB)の間に等価的なもの(共通点や類似点)を見つけ出し、それを手がかりに思考の流れをAからBへ変換させることによって、飛躍的なアイデアの発想を得ようとするものです。


■特徴と効果

何かの問題についてアイディアを考えるときは、ただ漫然と考えるよりは、何かしら手がかりとなるものがあったほうがやりやすいでしょう。この手がかりを活用してアイディアを発想しようとするのがアイディア発想技法です。

これらの技法を有効に使いこなすことによって、次のような効果を期待することができます。

@発想がすらすらと滑らかになりやすい。
A異なる観点からの見方ができる。
B幅広くいろいろな角度から柔軟な発想ができる。
Cアイディアを深く掘り下げていくことができる。
D新しい独創的なアイディアを生み出すチャンスが得られやすい。
E常にアイディアを考える習慣が身につく。


■活用の仕方

創造性開発技法を研修で活用するやり方には、いくつかの場合があります。

  1. 創造性開発技法の習得を目的とする
    ブレーン・ストーミング、KJ法、強制連関法、アナロジー技法など創造性開発の技法そのものの習得を目的とする場合である。この場合は、それぞれの技法の特徴や効用、限界などを十分に理解させることが大切である。

  2. 創造的問題解決をテーマとする
    問題解決のステップに応じて、それぞれの技法に向き不向きがある。たとえば、ブレーン・ストーミングは広く衆知を集めるのに適しており、KJ法は出された多くのアイディア群のそれぞれを結合させたり、発展させたりするのに適している。それぞれの技法の特徴をよく把握しておく必要がある。

  3. 受講者の創造性を開発する
    この場合は、創造性(創造的能力)とは何か、その特性や内容、創造的能力と対比される論理的分析的能力との関連や補完、創造的能力が企業の内外で果たす役割や機能について十分に理解しておくことが重要である。

■開発上の留意点

アイディア開発・発想技法は使いさえすれば必ずうまくいくというものではありません。技法そのものを使いこなせるかどうかは、主体の側の人間の「腕前(スキル、熟練)」の問題であり、その腕前を上げるための確実な方法は、トレーニングを重ね、何度も実践を繰り返してみることです。

  • 「アイディアを生み出すテクニック」という言い方をすることがあるが、この表現は厳密にいえば正確ではない。 アイディアを生み出すのは、決して技法ではなく、それを使う側の人間であることを忘れてはならない。

  • 技法は、何ごとかをやりやすくするための促進手段であり、そのかぎりでは重要なものである。

■その他

主な創造性開発のための技法を説明すると、次の通りです。


[チェックリスト法]

問題解決のために、アイディアを発想するときには、ただ漫然と考えるよりは、何らかの手がかりとなるものがあったほうがやりやすくなります。この手がかりとなりそうなことをあらかじめチェックリストにしたものが、ブレーン・ストーミングの考案者であるオズボーンが作成した“オズボーンのチェックリスト”と呼ばれるものです。次の9項目がそのチェックリストです。

@ほかに使い道はないか
既存の材料や製品や廃品などについて、ほかの新しい使い道を考え出すやり方です。
プラスチックが我々の日常生活の実に広い領域に進出してきているのが一番いい例でしょう。
Aほかからアイディアが借りられないか
その問題と似たものからヒントを借りてくるやり方です。
洋酒からヒントを借りて日本酒のオン・ザ・ロックを考えるなどがその例です。
B変えてみたらどうか
物の形や色や大きさなどを変更してみることです。
乗用車のモデル・チェンジなどは典型的なものです。
C大きくしてみたらどうか
現にあるものを大きくしてみたり、何かを付け加えたりすることです。デラックス型とか豪華版などがその例です。
D小さくしてみたらどうか
ダウン・サイジングそのものです。
Eほかのものでは代用できないか
ある目的に対して、現在のやり方以外の方法や手段を考え出すものです。
F入れ替えてみたらどうか
現にあるものの部分と部分、要素と要素などを入れ替えてみることです。
G逆にしてみたらどうか
前と後、上と下、右と左などをアベコベ、サカサマにしてみることです。エスカレーターは、人間ではなく、逆に階段を動かす、というアイディアです。
H組み合わせてみたらどうか
ケシゴムつきのエンピツ、挙式からハネ・ムーンまでのブライダル・セットなどがその例としてあげられます。


[強制連関法]

「強制連関法(フォースド・リレーションシップ)」とは、アメリカのチャールズ・ホワイティングが考え出したもので、一見、関連のない二つのものを強制的に関連づけていきながら、アイディアを生み出していくテクニックです。

たとえば、ある事務機器メーカーが新製品を開発しようとする場合を考えてみましょう。第一段階として、身近なところにある物を思いつくままに列挙して、次のようなリストを作ります。

・ 机
・ 椅子
・ 卓上スタンド
・ 書類戸棚
・ ブック・ケースなど
次に、これらの中で一つを取り上げて、ほかのものと一つずつ関連づけをしながら、アイディアを出していきます。たとえば、机と椅子、机と卓上スタンド、机と書類戸棚、などのように関連づけをして、次のようなアイディアを生み出していきます。

・ 椅子を回転式にする
・ 椅子を机に付属させる
・ はめ込み式の卓上スタンド
・ プッシュ・ボタン式卓上スタンドなど


[焦点法]

「焦点法(フォーカスド・オブジェクト・テクニック)」も強制連関法の一種であり、関連のない二つのものを強制的に関連づけていく点では同じですが、進め方がもう少し系統的で複雑です。
たとえば、「新しい椅子」を考案しようとするとき、椅子とはまったく関係のない任意のもの、たとえば「電球」を選び出して、この電球と椅子とを関連づけて、そこから新しいアイディアを生み出していこうとするものです。
その際、まず初めに、電球とは何かについて、その特性を列挙してみます。

・ ガラス製
・ 薄い
・ 球状
・ らせん式のネジ
・ 電気を使うなど
次に、それぞれの特性とテーマである椅子とを関連づけて、そこからヒントを得てアイディアをうみだしていきます。

・ ガラス製の椅子
・ 薄型の椅子
・ 球状の椅子
・ らせん式差し込みの椅子
・ 電気操作の椅子など
もし、これで満足のいくアイディアが得られないときは、「電球」の代わりに、まったく別の任意のもの、たとえば「花」を選び出して、これと椅子とを強制的に関連づけて、アイディアを出していきます。

・ 花模様のデザイン
・ 花の香りを出す椅子
・ 茎と葉をあしらった脚の椅子
・ 庭園用の椅子など
このようにして満足のいくアイディアが得られるまで、何回でも対象を取り替えて、同じことをくりかえして最終回答の焦点にたどりつきます。


[アナロジー技法]

アナロジーとは、類推のことであり、すでに知っている知識を応用して、似たような新しい事柄について、「多分そうではないか」と推しはかることです。Aがこうであるから、似たような条件を備えたBも、多分そうであろう、と推量することです。

この類推の原理がアイディアの発想に役立ちます。何か新しい未知の問題に直面したとき、すでに知っている類似の事柄と関連づけて類推すると、ヒントが得られやすく、アイディアが生まれやすくなります。

つまり、ある問題(テーマ)について、アイディアを考えていくときは、そのテーマと似たような物や事柄を思い浮かべて、そこからヒントを借りてくる方法です。

たとえば、次のような要領です。

・ 水上スキーから水中翼船
・ 竹トンボからヘリコプター
・ ツルの首からパワーショベル
・ バラの花ビラからウェディング・ドレス
・ 人体の心臓からポンプなど

[等価変換法]

創造性開発の技法の一つで、異なる二つのもの(たとえばAとB)の間に等価的なもの(共通点や類似点)を見つけ出し、それを手がかりに思考の流れをAからBへ変換させることによって、飛躍的なアイデアの発想を得ようとするものです。

たとえば、「クモの巣」と「小売店」とは、一見、何の関係もありませんが、クモの巣と小売店との共通点や類似点など等価的なものを考えながら、クモの巣の特性をあげてみると、次のようなことが考えられます。

  • 獲物が向こうから来るのを待つ。
  • 立地によって収獲が左右される。
  • エサが大きすぎても小さすぎてもいけない。
  • ときどき張り替えが必要である。

このようなクモの巣の特性の中から、小売店の経営に役立つヒントをつかんでいこうとするものです。このやり方は、わが国に昔から伝わる「なぞなぞ」によく似ています。「ケチなダンナとかけて、春の夕日と解く。その心は、クレソウデクレナイ」とか、「破れ障子とかけて、ウグイスと解く。その心は、ハルヲマツ」などの例でも、一見、関連のない二つの事柄の間に等価的なものを見つけて、思考の変換を行なっているわけです。

ところで、このような発想の仕方を電気工学者の市川亀久弥氏は次のような数式で表現しました。

Aο Bτ

この数式で、Aο(Aオミクロン)とは、変換する前の元の現象のこと(例、クモの巣、ケチなダンナ)、Bτ(Bタウ)とは、変換された事象のこと(例、小売店経営、春の夕日)、Cε(Cイプシロン)とは、式の両側を結びつけることを可能にする等価的な次元のこと(例、獲物が向こうから来るのを待つ、クレソウデクレナイ)を表わします。

このような等価変換の思考法に慣れておくと、柔軟な発想を誘発しやすくなるというわけです。