■実施の手順
インシデント・プロセスは次のようなステップを踏んで進められます。
第1ステップ
インシデントの提示
第2ステップ
事実・情報の収集
第3ステップ
解決すべき問題は何か
第4ステップ
解決策の立案とその理由
第5ステップ
このケースから何を学んだか
この5つのステップの中で、とくに第2の「事実・情報の収集」のステップが重要です。
第1のステップでは、たとえば、次のようなインシデントが受講者に提示されます。
ある商事会社での出来事である。
総務部総務課の社員たちは、日頃からコピー機やパソコンなどが故障してもすぐに修理に来てくれない管理課に対して不満を抱いていた。
ある日、若手社員の一人が、雑談の折りに上司である総務課長に「管理課からもっと早く修理に来てくれればいいのに」と軽い気持ちで訴えた。それを聞いた総務課長は、すぐに管理課長のところへ飛んでいった。
「管理課長、あなたの課ではパソコンなどが故障しても、直してやらない、と言ったそうだが、それは困ります。」
これを聞いた管理課長は、腹を立てて、こう言い返した。
「とんでもない。そんなことを言った覚えはありません。」
そして管理課長は総務課の社員たちのところへ飛んでいき、こういった。
「直してやらない、などと言ったことはないのに、なぜ総務課長にそんなことを言ったのですか。」
すると社員たちは答えた。
「私たちは課長にそんなことは言いません。」
こうして事態はすっかりこじれてしまった。総務課長、総務課の社員たち、管理課長の三者が日毎に対立的な感情を強めていった。
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第2ステップでは、担当講師は受講者に対して、次の点に留意することを強調します。
この5つのステップの中で、とくに第2の「事実・情報の収集」のステップが重要である。担当講師は受講者に対して、次の点に留意することを強調する。
@ | ケースの全容は質問によって解明していく。 |
A | 講師はケースの関連情報を把握している。 |
B | 講師は質問されたことのみに答える。 |
C | 同じ質問には答えない。 |
D | 受講者は他の受講者の質問にも注目する。 |
E | 講師にも不明なことは「不明である」と答える。 |
F | 受講者は質問によって得た事実や情報をもとに整理していく。 |
G | 第3ステップ以降の進め方は通常のケース・スタディと同様である。 |
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