能力開発データベース

■能力開発技法

マルチメディア学習法





概要 特徴と効果 活用の仕方 実施・開発上の留意点

■概要

CD−ROM等のマルチメディア教材を用いて行う集合教育(教室スタイルの研修)をいいます。

講師がいて、受講者が多数いるということで、一見すると通常の集合教育と変わらなく見えますが、通常の集合教育が講師の進行に合わせた学習になるのに比べ、マルチメディア学習法での学習はCD−ROM教材等を用いて、受講者が自分のペースで学習を進めるという点で大きく異なり、個人のニーズやレベルに応じて学習を進めることができます。

講師は、始めに研修開講の挨拶や学習の目的などを話し、次に学習に使うマルチメディア教材の使い方の説明をします。 実際の学習は、受講者が個々にマルチメディア教材を用いて行い、講師は受講者の質問があれば応じるやり方です。

この方式であれば、教材の内容を理解している人であれば、容易に講師を務めることができます。また、受講者としても、個々に自分の理解度合いに応じて学習を進めていくことができます。受講者自身が主体となって、自分のペースに合わせて学習を進行できるわけです。

この技法は、最近の目覚しいマルチメディア技術の発達により、学習教材のメディア化が行われたことによって実現された、新しい学習法ということができます。


■特徴と効果

ここでは講師・受講者・研修運営者の3者の立場からその特徴と効果を説明します。

(通常の集合教育の課題)
講師:
  1. 受講者のレベルがまちまちで、すべての受講者に満足のいく研修を行うことは難しい
  2. 日々進歩する新技術を習得し、タイムリーに研修を行うのは難しい

受講者:
  1. 講師の進行に合わせた受け身の学習となりがちなため、自分のペースで学習を進めることができない
  2. 受講者によっては、既に知っていることも研修の中で取り上げられることがあるため、研修で行う内容がすべて自分に必要なものとは限らない
  3. 周りの受講者に聞かれてしまうため、質問をしにくい場合がある

研修運営者:
  1. 講師の質によって研修内容が左右されてしまう
  2. 講師の育成にコストがかかる
  3. 全国に支店がある企業の場合は、全国でタイムリーに研修を行おうとしても、講師不足で、特に地方支店の研修が行いにくい


(マルチメディア学習法の特徴と効果)

講師:
  1. 受講者は自分のレベルに合わせて学習を行うので、講師はそれぞれの進捗を見ていれば良い
  2. 日々変わる新技術を習得しなくとも、CD−ROM等の教材で実際の学習がなされるため、容易に研修が運営できる

受講者:
  1. 自分が主体となって学習するので、自分のペースに合わせて学習を進行できる
  2. 既に知っていることは学習から省くことが出来るので、自分に必要な箇所だけ学習できる
  3. 講師にマンツーマンで質問すれば良いので、周りの受講者に気を使う必要がない

研修運営者:
  1. 実際の研修はCD−ROM等の教材で行うので、講師の質によって研修内容が左右されることは少ない
  2. 特別に講師を育成しなくても、研修しようとする内容をある程度マスターしているような人材であれば、容易に研修を行えるので、講師育成のコストはかからない
  3. 研修しようとする内容をある程度マスターしているような人材が、容易に講師を務められるので、全国の支店でタイムリーに研修を行うことができる


■活用の仕方

マルチメディア学習法のステップは、次の通りです。
CD−ROM教材を用いたパソコン研修を例に取って説明します。

  1. 受講者は一つの教室に集まります

  2. 講師は、開講の挨拶や学習の目的などを話し、次にCD−ROM教材の使い方やパソコンの基本的な使い方などを説明します

  3. 使い方が分かったところで、受講者は、そのパソコン研修の学習内容が入っているCD−ROM教材を用いて実際の学習を始めます

  4. 受講者が学習をしている間、講師は質問があった場合にだけ、いわばマンツーマンで、その受講者の質問に答えます

  5. CD−ROM教材の学習が終わった受講者は、講師の確認を得て(何らかの課題を与える場合もあります)研修が終了となります

このようにCD−ROM教材等を用いて行う集合教育をマルチメディア学習法といいます。


■実施・開発上の留意点

マルチメディア学習法を効果的に進めていくためには、メディアの選定とともに、その教材自体の内容の選定が重要なポイントとなります。

実際の学習がマルチメディア教材で行われるため、その内容の善し悪しに研修が左右されるのです。そのため、教材の選定は慎重になされる必要があります。総じて、講師の説明を必要としないで、学習が自己完結型でなされる教材であることが重要です。

また、受講者の質問に答えられるように、講師も教材の内容については十分理解しておくことで、効果的な運営をすることができます。

受講者の意欲や態度も重要です。学習の主導権を最大限受講者にまかせるのですから、受講者がいかに積極的に、かつ真剣に学習に取り組むかということが、学習の成果を左右します。

受講者の興味をひきつけることのできる優秀な教材を選択するとともに、途中で中間チェックを義務づけたり、学習の最後に課題を提出させたりするのも、効果的なやり方となります。