能力開発データベース

■能力開発技法

理解促進テスト法





概要 特徴と効果 活用の仕方 実施・開発上の留意点

■概要

教育、訓練の場において、学習の主体は生徒・受講者です。これをスチューデント・センタードといいますが、このスチューデント・センタードの考え方に徹して、学習の進行においてテストを実施し、その結果をグループ・アプローチによる相互啓発という形で実施するやり方を理解促進テスト法といいます。

テストやドリルをグループの討議課題(教材、ツール、インスツルメント)とするやり方で、そのテストは「理解促進テスト」とか「CCテスト(コンセプト・クラリフィケーション・テスト)」とか呼ばれています。

業務知識や管理知識など、知識や理論、概念などについて、教室で大勢の受講者に学習させるやり方として、通常、講義法が広く実施されています。講義法は、一度に大勢の人に大量の知識を伝達できるという利点はありますが、講師が伝えたとおりに受講者が理解しているとは限らず、理解され、記憶される度合い(学習の歩留まり)には、かなりバラツキがあり、低いのが実情です。理解促進テスト法は、これらに対する対処法として効果を発揮します。



■特徴と効果

理解促進テスト法の実施によって、次のような利点があります。

  • 受講者の研修への取り組みの姿勢を受動的でなく能動的なものとすることができる。
  • 仲間からの刺激に啓発されて自己啓発への動機付けがなされる。
  • 研修活動に主体的に参加しているので、研修の内容を身近に自分のこととして受け止めることができる。
  • 研修内容を身近に感じられるので、習得の度合い、学習の歩留まりが高い。
  • 研修内容が着実に身につきやすいので、それだけ職場に戻ったあとで、実践・活用される効果が期待できる。


■活用の仕方

研修の目標にしたがって、理解度テストの問題を準備するところから始まりますが、テストの種類としては、記述式と客観式とがあります。理解促進テスト法の進め方は次の通りです。

  1. 受講者が各自自分なりの回答を作成する。
  2. グループで討議してグループの回答を作成する。
  3. 講師が正解を発表して、その理由を解説する。
所要時間は、多肢選択式の20問であれば、1時間30分ぐらいが適当でしょう。少し時間が足りないくらに設定します。テストは、通常は、授業が終了したあとで受講者(生徒)がどれだけ理解し学習したかを評価・査定するために実施されますが、これをグループ討議の教材にしようというのが理解促進テスト法です。

グループ討議の教材としては、つぎのような客観テストの方が使いやすいでしょう。

  1. 多肢選択式
    マルチプル・チョイス方式。ある設問に対する解答を、A、B、C、…など、3項目か4項目くらいの選択肢として用意しておき、受講者(生徒)にその中の1項目を選択させるやり方である。

  2. ○×式
    正誤法ともいう。
    設問に対する解答が正しいか誤りかを○×で表示する方法である。

  3. 空欄充当式
    コンプリション・メソッド、または文章完成法ともいう。
    回答となる文章の中の一部(重要なキー・ワードなど)を空欄にしておいて、受講者に充当させていく。


■実施・開発上の留意点

理解促進テスト法を進めるときに注意すべき点は次の通りです。

  • グループでの討議が表面的でおざなりなものにならないように配慮が必要である。次のような注意事項を受講者に徹底しておくとよい。

    @ 安易な妥協はしない。
    A 多数決で押し切らない。
    B 少数意見を尊重する。
    C 納得ずくの合意を目指す。
    D 傾聴の姿勢で話し合う。
  • まぎらわしい選択肢を用意すること。しかも、その上で、唯一の“正解”が納得できるものでなければならない。
    つまり“議論の誘発制”と“正解の納得性”との綱引きのバランスを効果的に調整することが肝要である。

  • 設問や回答を作成するときには、Aももっともであり、Bも間違いではないが、Cのほうがベターかもしれない、というように意図的にまぎらわしくなるように工夫すると、グループ・メンバーの議論を活発なものに誘発することができる。