能力開発データベース

■能力開発技法

CAI





概要 特徴と効果 活用の仕方 実施・開発上の留意点

■概要

CAIはComputer Aided Instructionの略。工場の製造工程にコンピューターを利用して設計や生産することをCAD(Computer Aided Design)、あるいはCAM(Computer Aided Manufacturing)といいますが、これと同様に、コンピューターを利用して教育訓練をすることをCAIという。広義には、コンピュータを活用したシミュレーションなども含まれますが、ここでは、狭義のプログラム学習について触れるにとどめます。

プログラム学習とは、合理的に設計されたプログラム(段取り、筋書き)に従って生徒が自学自習を進めていく能率的な学習のやり方のことです。コンピューターに組み込まれるソフトウェアは、スキナーの提唱による「プログラム学習」の原理に従って開発されます。


学習内容をこまかくスモール・ステップに細分化して系統的に配列し、それぞれのステップごとに設問を提示して、生徒がこれに応答します。その回答が正しいかどうかはすぐに知らされ、それに応じて次の少し難しいステップに進みます。


このようにして能率的に学習目標に到達できるような仕組みがなされています。ティーチング・マシンはこの原理を応用したものであり、CAIはさらにこれにコンピューターを組み込んだものです。


■特徴と効果

CAIを効果的に活用すれば、次のような効果を期待することができます。

  • 一人一人の理解度や修得度合に応じて個別的に学習を進めていくことができる。
  • 自宅でも自学自習ができる。
  • 同じプログラムをきわめて多数の学習者に提供できる。
  • 易しい質問から、少しずつ難しい設問に進むようにプログラミングされているので、学習者は正解を応答できる確率が高く、成功感や達成感を味わうことができやすい。そのため学習への動機づけを高めることができる。
しかし、難点として次のようなことがあげられます。

  • プログラムを開発するためには高度の知識・情報を持った優れたスタッフの存在が欠かせない。
  • プログラムの開発に莫大な労力と費用を必要とする。

■活用の仕方

プログラム学習の原理に基づいてCAIのためにプログラミングされた教材のことをプログラム・テキストといいます。プログラム・テキストは次のような要領で作成されます。

  1. 学習内容の全体を大分類から中分類、小分類へとこまかく分解していく。こまかいスモール・ステップに細分化されたものをフレームという。
  2. それぞれのフレームは学習内容の全体と有機的に関連づけて、易しいことから次第に難しいことへと系統的に配列していく。
  3. それぞれのフレームごとに設問を設定する。設問には二つの種類がある。
    • 一つは学習させたいキー・ワードを空欄にしておいて、その空欄を充当させる空欄充当式(または文章完成法、コンプリション・メソッド)である。
    • もう一つは、A、B、C、Dなどの選択肢の中から解答を選択させる多肢選択式(マルチプル・チョイス)である。
  4. 学習者が質問に対して応答すると、その回答が正しいかどうかがすぐにフィードバックされる。
  5. 設問は初めはきわめて易しいことから始まり、少しずつ難しいことに進むように作成する。つまり、学習者が正解する確率が高くなるなるように配慮する。
  6. 正解の確率が高いので、学習者は成功や達成の感覚・感情を味わうことが出来る。このことが学習への動機づけを高めることになる。
  7. フレームの配列の仕方には二つのやり方がある。
    • 一つには回答が正解でなく誤答であったときに前のステップに戻るやり方(分岐式、ブランチ式)。
    • もう一つは分岐せずに進む(リニア式)である。リニア式の場合は正解の確率をかなり高いものにしておくことが必要である。

■実施・開発上の留意点

パーソナル・コンピューターが普及しているにつれて、CAIを活用できる機会も急速に拡大しています。

  • CAIにプログラミングされるは、学習のための教材である。プログラミングする学習の内容についての知識・情報を広く深く収集・習得しておくと共に、プログラム学習などの学習理論についても十分に精通して習熟しておくことが必要である。

  • 学習内容を伝えることも重要であるが、意欲を持って学習を続けさせる動機づけの仕組みを組み込んでおくことがさらに重要である。

■スキナー (B.F.Skinner : 1904-1990)

現代アメリカの代表的心理学者。ハーバード大学終身教授。新行動主義(Neo behaviorism) のリーダー。
1930〜40年ごろ、動物実験による基礎研究から実験的行動分析を確立した。 1950年以後、この成果にたって人間の学習行動、言語条件付けについて研究を進め、さらにティーチング・マシンの開発によるプログラム学習、行動薬理学、行動修正(変容)を利用した臨床技術、行動療法など多方面にわたって業績を残している。

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■ティーチング・マシン (Teaching machine)

プログラム学習法で使用する機械のことであるが、単なる視聴覚機器とは異なり、プログラムの内容を提示し、教える機能を有しているものをいう。ティーチング・マシンと呼ぶためには、

  • 学習者に対する教材の連続的な提示
  • 学習者の反応を要求するための手配
  • 学習者からの反応の質のフィードバック
の3つを含む必要がある。

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