厚生労働大臣賞(特選)を受賞された鈴木さんにお話を伺いました。
受賞作品:幾何公差測定品とテキスト教材一式
受賞者:鈴木 勝博、西村 友則、杉本 義徳、市川 正美
(独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構
大阪支部関西職業能力開発促進センター)
栗山晃治(株式会社プラーナー)
厚生労働大臣賞(特選)の受賞おめでとうございます。受賞されたお気持ちをお聞かせください。
大変光栄に思っており、大変うれしい次第です。また、本教材の作成および教材コンクールへの応募にあたり、ご支援頂きました関係者の皆様には、心より感謝しております。
今回の受賞作品の教材はどのようにして誕生したのでしょうか?教材誕生の経緯(きっかけ)について教えてください。
以前より、ポリテクセンター関西では、関西圏近郊の企業ニーズに基づき機械設計者向けに設計意図を的確に表現し、かつ作り手側はその意図を的確に解釈するために図面の曖昧さを排除できる幾何公差について、「幾何公差と位置度公差方式の解釈と活用実習」というコースを独自に開発してセミナーを実施していました。
受講者アンケートでは満足頂いている一方で、「幾何公差のイメージがつかめない。」「幾何公差をもっと詳しく知りたい。」「幾何公差を図面に入れるのは簡単だが、どうやって測定するのか?」などが寄せられていました。この両極端の差は、普段から幾何公差を使用している方と今後のために学びに来た人の差ではないか?と分析しました。
そこで、前段階のセミナー「機械設計者のための3次元測定技術(幾何公差編)」というコースを独自開発することで、教材開発に至りました。
幾何公差とは?
以前、私も民間企業で設計をしていました。その頃は、日本で設計した図面が日本の製造業で作られていたので、寸法公差(例えば30±0.1)さえ記入しておけば、真っ直ぐな形状で製作されていました。しかし、寸法公差のみでは真っ直ぐ作る必要は無く、歪んで作られてしまう可能性があります。姿勢や形態を指示することが幾何公差になります。
この教材の創意工夫した点は何ですか?
設計・製図分野は、日本工業規格(JIS)に則っているため、実習というよりは講義が主体になることが多いです。設計・製図分野の幾何公差だけに絞り、前半は講義を中心とし、後半は3次元測定機による幾何公差測定実習を行うことで、2日間で習得して頂けるように教材を開発しました。
また教材を開発するに当たり、測定物を製作する必要がありました。1つのワークで、ほぼすべての幾何公差を測定することができるように工夫しました。
大きさ、形、材料など試行錯誤した結果、今回の形状になりました。
3Dプリンタで製作した測定物
教材を使った際の訓練効果について教えてください。
通常、3次元測定機を使用したセミナーの場合、金属材料を精密に切削した測定物を測定します。すると、当たり前ですが全ての測定箇所が合格になります。
そこで、3Dプリンタでの製作を検討しました。3Dプリンタは0.1mm単位で積層をするためバラツキが大きく、測定方法や測定部分によって、不合格になります。受講生からすると、すべてが合格品よりは、合格部分や不合格部分があることで、より一層の理解度が高まることをねらいました。
教材を作成する上で一番苦労したのは?
形状と大きさですね。3次元測定機メーカーでも、いろいろな測定物を販売していますが、何もないところから、幾何公差をすべて網羅した最善の形と大きさは、なかなかできません。
今後も試行錯誤して、改善を図りたいと思います。
今後の展開について教えてください。
幾何公差については、特に考えていません。ポリテクセンター関西では、指導員の専門性によってグループ制になっています。今回もそのグループの中から生まれました。今後も日頃から訓練生や受講者の目線になり、アンケートなどにも目を向け、疑問に思ったことを相談し合いながら、いろいろな教材開発を続けていきたいと思います。
次に注目しているものは何ですか?
実は、基盤整備センターにて実施している「eラーニングを活用した高度な技能習得にかかる調査検証事業」に参加しています。これは、2年計画の2年目ですが、「プラスチック金型設計分野」に関するeラーニングを作成しています。非常に良いものが出来つつありますので期待して頂きたいです。
明治記念館にて、受賞者の方々とお話する機会がありました。
受賞者の方々は、常に受講生の視点に立った教材開発を心がけている姿勢に感銘を受けました。
また、事務局の一員として職業訓練教材コンクールに携われたことを大変嬉しく思います。
最後になりましたが、たくさんのご応募をいただき、誠にありがとうございました。
来年度は「職業能力開発論文コンクール」が開催されますので、今から準備方、よろしくお願いいたします。
職業訓練教材コンクール事務局 早坂