調査開発室の取り組んでいる調査研究開発テーマの概要と、進捗状況についてご報告いたします。

 今年度の当室担当テーマですが、

  • 総合的かつ体系的な職務分析の推進に関する調査・研究・開発
  • ものづくり訓練におけるITの活用方策に関する調査・研究
  • 中高年再就職支援訓練プログラムの開発及び検証実施に関する調査・研究

と、バラエティに富んでいます。


①総合的かつ体系的な職務分析の推進に関する調査・研究・開発


 言わずもがな、「職業能力の体系の整備等」というものです。
 今年度は、「大工工事業」「民生用電気機械器具製造業」「通信機械器具・同関連機械器具製造業」の3業種に取り組んでいます。
 全国から15名の機構職員に参加いただき、すでに4回の作業部会とデータ整備を終え、あとは報告書の完成を待つばかりとなっています。委員の皆様、本当にありがとうございました。年度内に取りまとめ、報告書を刊行いたしますが、皆様のお手元に届くのは、おそらく来年7月ごろになろうかと思います。(えっ、ちょっと遅い!?)
 本テーマは、平成24年度から5ヶ年の継続テーマとして実施しており、全22業種のデータ整備(新規及び見直し)+建設業の汎用データ4部門の見直し/新規開発を行ってきました。しかし、「職業能力の体系」データは全部で100業種! 開発以来ノーメンテナンスのデータもあり、これからも不断の見直しが求められます。また、これまで作成されたデータは、年度間や業種間の分析手法が異なっていたことや、仕事レベル付けに疑問が残るなど、課題も山積しています。来年度からは、これらの課題解決に向け、新たにテーマ設定をしていきます。


検討部会の最終日に行われた「検討結果発表」の様子

写真:検討部会の最終日に行われた「検討結果発表」の様子



②ものづくり訓練におけるITの活用方策に関する調査・研究


 今年度、ものづくりに関連する職業訓練でのIT活用について、2つの面から検討することとなりました。1つは、機構の実施する職業訓練の現場で効果的なIT活用方法。2つめは、機構の有する職業訓練の知見ノウハウを、IT活用により外部に提供する方法の2点です。
 職業訓練の現場でのIT活用は、今に始まった取組みではないものの、過去に作成した教材・テキスト・ツールなどは、OSやパソコンのアップグレードから取り残されてしまい、使おうにもなかなか…という状態です。そこで今回新たに、機械系2教材・電気系1教材を新たに作成し、その効果を検証することとなりました。
 全国8名の機構職員による作業部会を、これまでに2回開催し、開発教材の企画を詳細に検討しました。10月から、いよいよ教材の開発に取り掛かります。そして完成次第、各施設に持ち込み実際に試用テストを行い、その効果を検証していくことになります。興味のある施設の皆様、ぜひ試用テストにご参加ください!(詳しくは当室にお問い合わせを!)


 平面図では分かり難い複雑な形状や断面を、分割移動や回転図示により、分かりやすく表示します。

教材のモデルの一部「フランジの断面図示と3次元形状」

写真:教材のモデルの一部「フランジの断面図示と3次元形状」



③中高年再就職支援訓練プログラムの開発及び検証実施に関する調査・研究


 平成28・29年度の2年間で、新たな委託訓練コースを開発する試みです。
 今年度は、民間教育サービスの事例などを調査し、訓練カリキュラム試行版を立案し、実際に訓練を開始します。来年度は、訓練実施状況と結果を分析し、全国で実施可能な訓練コースのモデルカリキュラムとしてとりまとめていきます。

 中高年対象の職業訓練の在り方ですが、これまでの調査や検討の結果、以下のポイントに整理しました。キーワードは「中高年は経験豊富」。(至極当然、自明ですが…)
 ・豊富な経験は、再就職の「貢献要因」「阻害要因」の両方になり得ること。
 ・豊富な職業経験はそれ自体が「強み」、さらに磨き上げることで、より強力になる。
 ・逆に過去の経験にとらわれると、職業意識や環境の変化に取り残されることになりかねない。
  そこでマインド面の転換や変革、気づきや受容が重要な要素となる。

それらを踏まえ、新たに「中高年に特化した再就職支援」を訓練に盛込む提案をとりまとめました。
その内容は、
 ・職業意識の維持と転換、職業能力や職業意識の棚卸しなど、マインド面のフォローをする。
 ・就職活動の実践と学習や訓練とのリンクにより、多様な学習ニーズに対応する。
 ・受講者同士の交流による知識・経験の交換や就職意欲の喚起をはかる。
というものです。

 年度当初、「そもそも中高年って何歳なの?」という議論から始まった本テーマですが、ようやく形が見えてきました。