今回は、教材開発室が数年来実施している標題について、ご紹介いたします。

 現在、普通課程の普通職業訓練は、主に、その大半を都道府県が設置又は認定している職業訓練施設が実施しています。この訓練は、職業能力開発促進法(法律)、同施行規則(省令)に定められた職業訓練の基準(以下、「訓練基準」という。)に基づき実施されています。
 その訓練基準には、施行規則別表第2に訓練系・訓練科と教科目・訓練時間・訓練設備が示されており、さらにこれらと連動する詳細な基準は、教科の細目、設備の細目として示されています。

 これらの訓練基準は、社会や産業の変化、科学・技術・技能の進展等に伴い、不断の見直しが行われていることは言うまでもありません。この見直しの仕組みにおいて、一役を担っているのが当室であります。
 訓練基準の見直しを行う対象訓練分野は、前年度に厚生労働省で開催される「職業能力開発専門調査員会(以下、「調査員会」という。)」で決定されます。これを受けて当室は、訓練基準の見直しを行うための基礎研究会を設置し、対象となった訓練分野に専門的な知見を有する方(職業訓練指導員等)を委員として招聘し、検討を行います。そして、この検討結果を取りまとめたものを、訓練基準の見直し案(基礎資料)として、厚生労働省に提供します。その後、同省が対象の訓練基準について、調査員会の指摘・意見を踏まえながら改正案を確定し、省令あるいは法令の改正へと運んでいきます。


  • 訓練基準の見直し・改正の流れ

訓練基準の見直し・改正の流れ


 また当室は、この訓練基準の見直しのほか、付随する「技能照査の基準の細目」の見直しに加えて職業訓練施設が実施している「技能照査試験問題(学科)」の作成に係る指標の検討や学科例題集の作成にも携わってきました。これらは、職業訓練における受講者の評価の水準を維持するためのものであり、訓練基準の見直しとともに重要なものであります。

 さて、当室が本年度実施した訓練基準等の見直しや技能照査例題集の作成について、その概要をお伝えします。
 なお、すべての研究会は滞りなく終了し、それぞれの研究会からの見直し案について、厚生労働省の調査員会で随時審議されており、訓練基準等の改正に向けた取組みが現在行われていることを申し添えます。

【平成28年度の実施概要】
 訓練基準の見直しは、「建築・土木分野」の7つの訓練系(建築施工系、建築外装系、建築内装系、建築仕上系、設備施工系、設備管理・運転系、土木系)、計27の訓練科(木造建築科、建築設計科、建築板金科、インテリア・サービス科、左官・タイル施工科、配管科、土木施工科など)を対象としました。用語等の修正から、現状に即した教科目あるいは教科の細目の追加・削除の提案とともに、一般に多用されている設備・機器の導入の提案として取りまとめました。また、これに付随する技能照査の基準の細目についても見直しを行いました。
 なお、見直しに当たっては、研究会委員の知見のほか、訓練実施施設へのアンケート、ヒアリング調査の結果についても反映させています。


  • 「教科の細目」の見直し提案例

「教科の細目」の見直し提案例


 技能照査問題(学科)の作成に関する研究は、平成25年度から開始されて4年目を迎えています。1969年、職業訓練法(現:職業能力開発促進法)の第12条に技能照査が規定されてから、およそ半世紀を迎える現在、技能照査の問題作成は、各訓練施設で行われています。これまで技能照査の目的である習得度を確認するための問題には、評価の水準を維持するための指標が示されていませんでした。本研究会発足当時、この指標について検討が行われ、その成果物として、「技能照査問題作成の手引き(以下「手引き」という。)」が作成されました。これには、「問題精査票」及び「問題作成チェックシート」といった問題作成時に活用するツールが収録されています。この4年間(研究期間)は、年度ごとに訓練系・訓練科を変更し、手引きの検証を行うとともに例題集を作成してきました。
 対象とする訓練分野は、前年度に訓練基準の改正があった訓練分野の中から選定することとしており、本年度は「電子・繊維分野」を対象として、手引きに基づき例題集の作成を行いました。


  • 和裁グループ
  • 電子グループ
  • 研究会における検討の様子(左:和裁グループ、右:電子グループ)

 最後に、改正された訓練基準の最新電子データは、当センターホームページで閲覧・ダウンロードできるよう準備を進めていますので、今しばらくお待ちください。(新年度公開予定)