• 鳥取県立倉吉高等技術専門校 コンピュータ制御科  川口哲一・加藤 明

3.3 BASlC-52ボードのソフトウェア

(1) ソフトウェア開発環境

近年パソコンの高性能化,低価格化にともない,企業あるいは個人でのパソコン利用者が大幅に増加している。しかも個人ユーザでさえ快適にプログラミングができるような環境がハードウェア,ソフトウェア両面で整っている。その中で,8ビットパソコンの時代から個人に親しまれてきたプログラミング言語がBASIC言語である。われわれはシステム開発にパソコンという汎用コンピュータとROM-BASICや市販のDISK-BASICあるいはその他のプログラミング言語を使い,プログラムを作成してきた。ところがマイコンのシステム開発になると話は大幅に違ってくる。

初期のパソコンがそうだったように,まず第一にハードウェアを組み上げ,そしてアセンブリ言語でプログラムを作成する。プログラムを作成するうえでハードウェアの知識は当然必要となってくる。しかも,マイコンは機器組み込みを前提としているため,キーボード,ディスプレイなどパソコンのように扱いやすい便利な周辺機器もない状態である。このように,パソコンのソフトウェア開発環境がここ数年でめざましく進歩したにもかかわらず,マイコンシステムのそれは進歩の度合いが著しく低い。

これに対してBASIC-52ボードはシリアル通信機能により,パソコンをマイコンのソフトウェア開発用端末とすることができる。つまり,8ビットパソコンのBASICモードと同じ状態である。パソコンのキーボード,ディスプレイ等を利用してソフトウェア開発を行い,機器組み込み時にはプログラムをROM化した後端末を切り放す。これは通常の16進キーによるマイコンソフトウェア開発よりも格段に効率のよいシステムである。

図4にパソコンとBASIC-52ボードとの通信を行うためのターミナルプログラム,図5にシステム構成を示す。

図4
図4
図5
図5

(2)MCSBASIC-52について

MCSBASIC-52は教育,計測,制御用プログラム作成のための十分な基本機能を備えている。通常のパソコン上のBASICと同じように,RAM上で開発したプログラムをインタプリタ機能を使用して実行することができる。また,RAM上で開発したプログラムをフロッピーディスク等の記憶装置に保存(ダウンロード),あるいは読み出し(アップロード)ができるため,プログラムの開発および管理が容易となる。

さらに,BASIC-52が提供するラインエディタの他に,市販のテキストエディタも使用できるため,プログラムの作成,修正に要する時間を大幅に削減できる。BASIC-52では表2に示すように一般的なBASICの命令を用意しており,ステートメントも違和感なく使用することができる。図6に一般的なBASICプログラム例を示す。

表2
表2
図6
図6

(3)ソフトウェア開発支援ツール

図7に示すように,通常マイコンのソフトウェア開発では,専用の機器を使用して複雑な開発工程を経なければならない。さらにソフトウェア開発は一度の試行で正常に動作させることは難しく,何回かの試行錯誤が必要となる。このとき,最も面倒なのがプログラムのROM化であり,試行錯誤(プログラム修正)のたびにROMライタによるプログラムのROM化,ROMイレーサによるROM内のプログラムの消去を繰り返すことになる。BASIC-52ボードはこの煩雑なROM化操作を行わずにプログラムをデバッグできることが最大の特徴である。

図7
図7

図8にBASIC-52ボードを使用したときのソフトウェア開発工程を示す。この場合,同ボードのRAM上でBASICインタプリタ機能を使用してデバッグが可能なため,プログラムのROM化は試行後の一度だけですむ。しかもEEPROMを搭載しているため,ROMライタを使用することなくダイレクトコマンド1つでROM化が可能であり,開発にかかる手間,時間等を大幅に削減できる。具体的には,RAM上に作成したプログラムを置き,ダイレクトコマンドPROGを実行することでROM化は完了する。

図8
図8

またROM化に失敗した場合あるいはROM内のプログラムを修正,削除したい場合にもBASIC-52ボードには大変便利なツールが用意されている。それはROM内のプログラムを消去するプログラムであり,削除したいバイト数とROM内に格納されているプログラムの起点アドレスを指定することにより,該当区間に格納されれているプログラムを消去できる。図9にEEPROMの内容を消去するプログラムを示す。

図9
図9

さらにBASIC-52にはROM内のプログラムをチェックするためのダンププログラムが用意されている。このプログラムを実行し,起点アドレスを指定することにより,メモリの内容を256個ずつ確認することができる。図10にメモリダンププログラム,図11にその実行結果を示す。

図10
図10
図11
図11

以上のツールおよび方法はマイコンシステム開発の効率を大幅に向上させるものであり,教育者あるいは実際に企業でマイコンのシステム開発を行う技術者にとって非常に大きな喜びであろう。(つづく)

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