• マツダ工業技術短期大学校校長 富谷  豊

企業革新,そのひとつ。

幹部社員人事管理制度の改革,目標による管理の復活,脱・体系的階層別教育偏重と部門による職能研修の強化。ひとりひとりのキャリアアップの必要性が,現実感をもって語られ,また,そのための施策が展開されている。

日本的人事システムにつき,次のようなパラダイムシフトが求められているという(産能大学「21世紀指向の人事制度と評価システムのあり方」)。

(1)採用 新卒一括採用→カンバン方式採用

(2)教育 年次・同質的教育→個別・戦略的教育

(3)評価 総合評価→成果業績評価

(4)処遇 年功中心→実績中心

(5)賃金 一律定昇+ベア→個別賃金+ベア

多くの新人を採用し,同質的な教育を施し,事業の拡大に貢献させたことから,事業領域の再構築に向けての設備・人員のスリム化へ。さらに,職務・職位・目標・成果という与件を,確実なものにできる人材の確保・育成へということであろう。

世の中ベースでも,教育が動いている。

「普通の授業は,大学進学までのこと。この授業は,企業の方々のお話を聞くこともあって,卒業後の進路問題に触れることができ,将来のためになる」(総合学科の履修科目〈産業社会と人間〉を受講した高校生の声)。教員の民間企業研修などとあいまって,暮らしの中の教育・役立つ知識技能の習得という,開かれた学校教育の色彩が生まれている。

オヤッと思うようなところからの講演依頼も多い。大学・郵便局・消防署・労働組合・公民館など。静かなるブーム,古典ともいうべき「エミール」が,「学問のすすめ」が,「代表的日本人」が読まれているかと思えば,ビジネスキャリア制度など,資格の経済学が論ぜられているのも,興味ぶかい。

転換,新しい時代対応。企業でいうところの,リエンジニアリングを成功させるためのリマインディング,ものの見方・考え方,行動の仕方の再構築ということで,教育の世界がクローズアップされ,また,変革しているのであろう。

新しい自分づくり。

トム・ピーターズの言葉に,レジュメイング(履歴書[レジュメ]の動詞化)というのがある。

常に,白分の履歴書を想定しながら,学習に,仕事に取り組むことの必要性が説かれている。ひとりひとり,専門性・新しい得意技の確立というキャリアプラン,人生80年生涯現役対応というライフプランの実践が求められている。

(1) 自分は,何をめざしているのか。志は何か

(2) そのために,何をやってきたのか

(3) 持っている知識や技能が,その分野で誇れるもの,貢献しているものであるという証明はあるか

(4) 所属する企業や団体以外の人とのネットワークは,充実しているか,広がっているか

自問自答したい。

人は,成長もすれば,堕落もする。自己啓発・年間1000時間,自己成長投資・年収の10%で,

(5) 今年の末に書く履歴書には,去年のそれと異なる内容を書きたいものである

時代の,そして,自らの求める,自主・自助・自立の旗印のもと…。

とみたに ゆたか

とみたに ゆたか
とみたに ゆたか

略歴

1964年 愛媛大学文理学部卒業後,東洋工業株式会社(現マツダ)入社。初任人事部。

国内営業本部,購買本部,開発本部の部課長職歴任。

1992年 教育訓練部長,マツダ工業技術短期大学校校長兼務,現在にいたる。

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