2023年1号「技能と技術」誌311号
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図12 マリーナでの実演の様子図13 コンテナにごみを載せるダイバー10月22日,北九州市小倉北区の勝山公園前艇庫前にて,北九州市立 水環境館主催による「第4回くいとめろ大作戦!」が開催された。当日は市民ボランティア20余名,ボランティアダイバー10余名が川岸と水中を清掃する中,実証実験の機会を得た。ロボットはこの日までに,通信制御回路が水密容器に収められ,巻き込み防止ネットや水中ライトなどの安全対策が講じられた。開催前には,紫川で初めての試験航行を行ったが,その川の広さと流れの速さに圧倒され,航行速度が出ないことに不安が感じられた。清掃前のオリエンテーションではダイバーの方々から,接近時にはスラスタを止めてほしい,転覆時はどうすれば良いか,触れてはいけない箇所はどこか,漏電対策はしているのかなどの意見や質問が上がり,それぞれ学生から回答し,理解を得た。13時40分にロボットを川に浮かべ,6分後にダイバーから最初の運搬要請が入った。浮上地点にロボットを近づけると,ダイバーはフロートに手を掛けながら姿勢を保ち,ロボットには空き缶やペットボトル,弁当容器が入った収穫ネット2袋が載せられた。その後,ロボットを川岸に近づけ,学生たちにより袋が引き上げられた。コンテナにごみを載せるダイバーを図13に,ごみを運搬するロボットを図14に,ボートフックでごみを引き上げる学生を図15に示す。続いて2度目の運搬要請が入り,再度浮上地点に近づけた。今度は1m四方のトタン板が載せられた。しかしその後,川岸への運搬中,川の中央で突然ロボットが停止し遠隔操作ができなくなってしまっ-5-た。やむを得ず,SUPに乗っていた福田氏にロボットを曳航してもらい,岸に引き上げた。引き上げてみると,制御回路が収められたアクリル容器が焦げて溶けていた。容器を開け回路を観察すると,バッテリと接続するケーブルの被覆が溶け,心線が溶断していた。その場でなすすべはなく,不本意ながら実証実験は終了した。本実証実験では,一度だけ清掃支援手順に沿って海洋ごみを運搬することができた。しかし,目標であるごみ運搬を10回繰り返し,清掃範囲の終点となる水環境館にたどり着くことはできなかった。ロボットの活動時間は15分だった。清掃活動の後,ダイバーの方々からは,思った以上にロボットが安定して浮いており,フロートをつかんでも安心して作業ができた点や,100kgまでの荷物を載せ,流れのある川を自由自在に行き来できるのであれば,海水浴場などで人命救助を行うロボットも開発できるのではないかなど,ダイバー経験を生かした前向きな意見を頂けた。後日,事故発生の原因追求を行った。原因は紫川の流れに対応するために実証実験直前にスラスタの最高速度を上げた事。そして,Li-Poバッテリと接続するケーブルの許容電流が低かった事であった。その後に行ったスラスタの負荷試験からも,モータ電流がケーブルの許容電流を大幅に超えていたことがわかった。この日までのロボット開発の工程は,NHK北九州により密着取材撮影され,11月17日に「ニュースブリッジ北九州」で北九州地区に向けて,11月24日に「おはよう九州沖縄」で九州,沖縄地域に向けて,2023年1月4日には「おはよう日本」において,全国に向けて放送された。6.紫川清掃活動 実証実験

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