2023年1号「技能と技術」誌311号
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図6 ヒアリングの様子図7 清掃支援手順輸送できる収穫ネットに拾い集める。各種ごみは,ダイバーが川岸まで泳いで運搬する他,SUP(Stand Up Paddleboard)やカヤックに乗った水上スタッフが舟にごみを載せ,手こぎで川岸まで運ぶ。運んだごみを水中から岸に引き上げる際は,ごみに生じていた浮力が無くなるため,陸上スタッフも重労働を強いられる。福田氏から,2022年度は10月22日に紫川清掃活動が実施されることを聞き,半年後の水中清掃活動に向けて共に協力しながら,清掃活動を支援するロボットを開発することを約束した。後日,実習テーマに配属した15名の学生にサブテーマを選択させ,生産機械システム技術科(以下,「機械科」という。)から2名,生産電気システム技術科(以下,「電気科」という。)から2名,生産電子情報システム技術科(以下,「電子情報科」という。)から2名の学生が,ロボットの開発を担当することになった。5月17日,再度福田氏に来校していただき,今度は開発担当学生から水中清掃活動の詳細と開発するロボットへのニーズについてヒアリングを行った。ヒアリングの様子を図6に示す。清掃活動は約2時間を予定する。清掃範囲は紫川水上ステージ(川上)から水環境館(川下)までの400mの水域で,川幅は50mから60mある。これまでは,カヤックに10kgの収穫ネットを2袋載せて川岸まで運び,水面から川岸まで0.5mから1m程袋を持ち上げていた。福田氏からは,ロボットの本体には波乗りに使うボディボードが浮力材として利用できると提案していただき,また要望として,高速で回転するスラスタに手指や物が巻き込まれないように巻き込み防止-3-ネットを取り付けてほしい,ロボットの現在位置を潜水中のダイバーに示すために水中ライトで下方を照らして欲しい,ロボットの付近でダイバーが潜水中であることを示すために,潜水旗を掲げてほしいというダイバーへの3つの安全対策が挙げられた。加えて,親しみやすく覚えやすいロボット名をつけてほしいと告げられた。その後,紫川清掃活動に求められる仕様と応用課程の習得技術要素を盛り込み,ロボットの機能要件を定義した。ロボットの本体は,ボディボードをボートフェンダー用フロートで前後から支え,上部に背の低いメッシュコンテナを載せ,下部に4つのスラスタをハの字に配置し構成する。そして,コンテナに20kgのごみを載せた状態で断続的に1時間以上稼働できること。ゲームパッドによる遠隔操作と200m以上の無線通信により,前後左右への移動と旋回ができること。ロボットの緯度,経度,方位,前方映像について,50m以上の無線通信により遠隔監視ができること。そして,ロボットが浸水したり,転覆したりする恐れがあるため,制御回路とバッテリは水密容器に収めることとした。また,1時間の活動時間で,一度に10kgのごみを運搬することを10回繰り返し,合計100kgのごみを運搬することを目標とした。続いて,ロボットによる水中清掃の作業支援手順を立案した。作業支援手順を図7に示す。はじめに,ダイバーとロボットが入水する。次に,ダイバーが川底のごみを収穫ネットに回収する。その後,ダイバーが浮上しロボットのコンテナに収穫ネットを載せる。最後に,ロボットを川岸に寄せ,陸上スタッフが,船を引き寄せるのに用いるボートフックに収穫ネットを引っ掛け,川岸に引き上げる。

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