2023年1号「技能と技術」誌311号
4/44

図3 水中清掃活動(陸揚げ作業)図4 角島図5 角島の海洋ごみ2022年3月,海中ロボット技術を用いて海洋ごみ問題に取り組む中で,角島のことを知った。角島は,山口県下関市豊北町にある島で,青い海に囲まれながら角島大橋で島に渡ることができる絶景観光地である。角島を図4に示す。しかし,環境省が令和元年(2019)に実施した海洋ごみ調査により,角島は全国で最も多量の海洋ごみが漂着している地点であることが明らかになった。3月16日,筆者(寺内)と岡田特任教授は角島に向かい,角島漁協了解のもと,環境省の調査が行われた北田の尻漁港海岸を視察した。角島の海洋ごみを図5に示す。丸石が集積する海岸には,多量の海洋ごみが打ち上げられていた。海岸線500mに渡り,養殖用フロートや漁網,ロープ等の漁具,材木や薬品ボトル,ペットボトル等,水に浮き海流で運ばれやすい海洋ごみが漂着していた。角島の現状を目の当たりにしながら,将来の実証実験に向けて北九州市沿岸の海洋ごみホットスポットの調査を進めた。進める中で,昨年北九州市で「海のお掃除プラント&ロボット夢コンテスト(以下,「海のお掃除ロボコン」という。)」が開催されたことを思い出した。海のお掃除ロボコンは,海洋ごみの回収と海洋汚染の改善をテーマに,海洋環境を改善するロボットのアイデアを自由に表現するコンテストである。コンテスト開催報告書の中から,Mr.DIVER福田佑介氏のアイデアが目に留まった。福田氏は,ダイビングインストラクターや潜水士の経験を生かして,河川ごみ回収ロボットのモデルを提案すると共-2-に,北九州市小倉北区を流れる紫川にごみフェンスを設置し,河川ごみ回収の実証実験を行っていた。その後,TwitterやInstagram,YouTubeからMr. DIVERが北九州市内で水中清掃活動に取り組んでいることを知り,代表の福田氏に北九州市沿岸の海洋ごみの現状をヒアリングするために連絡を取った。4月14日,福田氏に来校していただき,水中清掃活動について伺った。Mr.DIVERは,10余名からなるボランティアダイバーチームで,「2050年の未来の海を守るチーム」として,2019年から北九州市小倉を代表する紫川や,人気観光地である門司港レトロ等,多くの人の目を引く場所で水中清掃活動を行っている。水中清掃活動は水深3mから5mの川底や海底で行われる。川底には不法投棄された自転車や車のタイヤ,バッテリ等の大型ごみや,瓶,缶,ペットボトル,財布等の小型ごみが広範囲に散乱している。視界が1mもない水中で,大型ごみは浮揚バッグを取り付け水面まで浮上させ,小型ごみは10kgまで2.地域の海洋ごみ問題とMr.DIVERとの出会い3.水中清掃活動とロボットによる支援方法

元のページ  ../index.html#4

このブックを見る