2023年1号「技能と技術」誌311号
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図1 船底点検ロボット図2 水中清掃活動(潜水作業)九州職業能力開発大学校 寺内 越三,牟田 浩樹,久場 政洋,岡田 正之海洋環境団体 Mr.DIVER 福田 佑介海洋ごみは,海洋環境の悪化や海岸機能の低下,景観への悪影響,船舶航行の障害,漁業や観光への影響など,様々な問題を引き起こしている(1)。海洋ごみの約8割は陸域起源で,陸で発生したものが河川を伝って海に流出したことがわかっており(2,3),全国各地では海洋ごみ問題の周知啓発と,海洋ごみの流出を少しでも防ぐことを目的に,街頭清掃活動や海岸清掃活動が実施されている(4)。九州職業能力開発大学校応用課程生産システム技術系では,2004年度から開発課題実習において,海中ロボットの開発に取り組んできた。2020年度からは,テーマ名を「海中作業用ロボットの開発」と定め,マリーナに海上係留されるボートの船底をROV(Remotely Operated Vehicle)に内蔵したカメラで撮影し,操作者に映像を配信する「船底点検ロボット」など,地域社会で活躍する実用的な海中ロボットの開発に取り組んでいる。2022年度に開発した船底点検ロボットを図1に示す。2022年4月,海中ロボット技術を用いて海洋ごみ問題に取り組む中で,海洋環境団体 Mr.DIVER(代表:福田佑介)に出会った。Mr.DIVERは,海洋環境の改善と海洋ごみ問題の啓発を目的に,北九州市の観光地などで水中清掃活動を行っている。水中清掃とは,ダイバーが河川や海中に潜水し,不法投棄された大型ごみや生活排出された小型ごみの収集を行う活動である。水中清掃活動を図2,3に示す。小型ご-1-みを回収する際は川底まで潜水し,収穫ネットにごみを拾い集め一定量たまったところで浮上し,川岸まで泳いで運搬する。川岸までは10mから50mを往復する必要があるため,ダイバーは体力を消耗し,作業効率は低下する。そこで,ダイバーが浮上後,回収したごみを浮上地点から川岸まで運搬するロボットがあれば,ダイバーは水中作業に集中することができ,水中清掃活動の効率化を図ることができる。以上から,本課題では海洋環境の改善と海洋ごみ問題の啓発,水中清掃活動の効率化を目的に,ダイバーを支援するUSV(Unmanned Surface Vehicle)型の遠隔操作型舟型協働ロボット「海洋ごみ運搬ロボット」を開発することを目標とした。1.はじめに~SDGs14の達成に向けて~ダイバーニーズを具現化したUSV「海洋ごみ運搬ロボット」の開発

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