2023年1号「技能と技術」誌311号
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図2 TB10型,スロットル開度と回転数の関係巡航飛行中に出力レートの変更や飛行高度の変更を行う場合には,新たな回転数およびMAP(吸気圧力)に設定変更する必要がある。ミクスチャ・レバーの設定については3.6のF項に記述した内容であり最後に操作すればよい。ここではスロットル・レバーとプロペラ・レバーの操作順について記述する。6.1 スロットル開度と回転数の関係図2にTB10型の地上試運転時および巡航飛行時のスロットル開度に対する回転数の変化の概要を示す。地上試運転時のプロペラ羽根角低ピッチ状態の線(斜線)に対し,巡航飛行時の低ピッチ状態の線(斜線)は左にオフセットする。飛行速度があるため,相対的にプロペラ羽根断面に流入する空気の角度が大きくなり,プロペラ回転負荷が減少するためである。-27-プロペラ・ガバナーによる選定回転数に達すると横ばいし羽根角は中間ピッチとなる。斜線より右の範囲にある場合はすべて中間ピッチである。(急降下時は高ピッチ)航空用ピストンエンジンの場合,各回転数に1対1で対応するMAPの最大値(地上における値)が決められている。高回転数では制限はない。TB10型の例では2400RPM以下の回転数に対し制限があり,これを図中に描くと図の右下の範囲となる。これを「連続運用禁止範囲」と呼ぶことにする。地上ファンクションテストのプロペラ・チェックにおいて,1500RPM以下に下げないように指示されていることおよび自身の計測事実で1400RPMまで下げると,実MAP値がエンジン性能曲線から推定される制限MAP値を超えることから,ほぼ図中のこの範囲は妥当であると考える。(地上試運転時)上空におけるデータがないのが残念であるが,飛行中も低めの回転数においてはMAP値をなるべく高くしないよう注意されている。低めの回転数において高いMAP値を示しているときには,エンジン出力行程において燃焼した混合気の膨張が遅くなり,シリンダ内のピーク圧力が通常より高くなるため,ピストン・ピストンロッド・クランクシャフト等の重要な部品にかかるピーク応力が高くなり,エンジン寿命を低下させる。6.2 巡航飛行状態の例表7に実機の水平飛行性能を示し,以下の説明に利用する。6.巡航飛行中のレバー操作の順

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