2023年1号「技能と技術」誌311号
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飛行機用プロペラは大きく分けて「固定ピッチプロペラ」と「可変ピッチプロペラ」がある。「可変ピッチプロペラ」にも数種類あるが,現在の実用機に使用されているものはほとんど「定速プロペラ」である。「フェザリング・プロペラ」も「リバース・プロペラ」も「定速プロペラ」の一種である。定速プロペラにはプロペラ・ガバナーが必要である。5.1 プロペラ・ガバナーの機能(役目)(1)エンジン/プロペラ回転数を選定する。(手動)(2)選んだ回転数を維持する。(自動)実回転数が選んだ回転数(選定回転数)にならない場合は次の2つである。・低ピッチ(可変範囲内で最も低い羽根角)のプロペラを選んだ回転数で回すだけのエンジン出力がないとき。(小出力時,ガバナーはアンダースピード状態のまま)・高ピッチ(可変範囲内で最も高い羽根角)に達しているのに,既に選んだ回転数より高回転になっているとき。(急降下時,ガバナーはオーバースピード状態のまま)5.2 ガバナーの回転数選定機能(手動)ガバナー内部のスピーダスプリングの頭部側(上側)位置により選定回転数が決まる。ガバナー外部のコントロールアームを回すと,この位置が変わる。プロペラ・レバーはケーブル等を介して,このコントロールアームを回している。すなわち,プロペラ・レバー位置により選定回転数が決まる。言い換えると,プロペラ・レバーは「回転数セレクトレバー」である。5.3 ガバナーの回転数維持機能(自動)ガバナー内部のスピーダスプリングのスプライン側(下側)位置が,パイロットバルブの位置となる。パイロットバルブが唯一特定の位置にあるとき,プロペラとの油路が断たれ,プロペラ内部にあ-25-る油量はそのまま維持される。すなわち,羽根角はそのまま維持される。この状態を「オンスピード状態」という。ガバナー内部のフライウエイトはエンジン回転数に比例した回転数で回され,その遠心力(回転数の2乗に比例)によってスピーダスプリングの下側(パイロットバルブ)を持ち上げる構造になっている。パイロットバルブは常に,この持ち上げる力とスピーダスプリングの張力が釣り合う所に位置し,この位置がちょうど「オンスピード状態」になるときのエンジン回転数が「選定回転数」であり,スピーダスプリングの頭部側(上側)位置により変化する。パイロットバルブが「オンスピード状態」より上側にあるときを「オーバースピード状態」といい,多くの「単発機用定速プロペラ」の場合にはプロペラ内部に油を送り込む向き,「フェザリング・プロペラ」「リバース・プロペラ」の場合には内部の油を抜く向きに働き,羽根角を高くする。パイロットバルブが「オンスピード状態」より下側にあるときを「アンダースピード状態」といい,多くの「単発機用定速プロペラ」の場合にはプロペラ内部の油を抜く向き,「フェザリング・プロペラ」「リバース・プロペラ」の場合には内部に油を送り込む向きに働き,羽根角を低くする。ガバナー回転数維持機能の応答例①②③④を表5に示す。5.プロペラ・ガバナーの働き

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