2023年1号「技能と技術」誌311号
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J:4⑩ フルスロットル・チェックこの点検は,スロットル・レバーをフルスロットル(最前方)まで操作し,プロペラ・ガバナーの最大回転数ストッパーの調整が適正であることと,エンジンが所定の出力を発揮していることを確認している。TB10型の例では最大回転数は2680~2700RPMに規定されている。出力に余裕があるため,もしこの抑制がなければエンジン/プロペラ回転数は3000RPMを超えるであろう。103%(2781RPM)以下のオーバースピードに対しては特に対処は必要ないが,それを超えるオーバースピードを起こした場合には相当な対処が必要になる。ゆえに,この操作中は回転計を常に注視し,目安2750RPMを超えることがないようにしなければならない。2750RPMを超えるようであればフルスロットルまで操作してはならない。最大回転数の調整が必要な場合は,ガバナー・コントロールアームのストップ位置を決める調整ネジにより行う。CW(時計回り)に回すと最大回転数は低くなる。CCW(反時計回り)に回すと最大回転数は高くなる。経験上,1回転(360°)で約30RPM増減する。フルスロットル時のMAP(吸気圧力)について,TB10型の様な自然吸気エンジンにおいては大気圧(標準29.92in-Hg)を超えることはない。低高度の地上試運転においては約28.5in-Hgが標準であり,大気圧の高低に伴いスライドする。この最大MAPの値が正常であることおよび十分に回転数が上がっていることをもって,エンジンは所定の出力を発揮していると判断している。-23-なお,この操作はなるべく短時間で完了するよう心掛け,周囲への騒音に配慮しなければならない。3.7 点検表5-4マグネト・カットオフテストこの点検は,マグネト・セレクタをOFF位置にしたときエンジンが切れること(地上作業の安全)を確認している。スロットル・レバーでエンジン回転数を900RPMまで下げた後,セレクタをOFF位置にし,エンジンが切れ回転数が500RPM程度まで下がったことを確認した後,速やかに(停止する前に)L位置そしてBOTH位置に戻す。この操作は,その後の地上作業をするときの安全確保のための確認であり,エンジン停止直前に行うのが望ましい。もしエンジンが切れないようであれば,多くの場合マグネトのグラウンドライン(接地線)の断線または接触不良である。3.8 点検表5-5エンジンの停止エンジンの停止は,ミクスチャ・レバーをアイドルカットオフ(手前いっぱい)に操作してシリンダ内の混合気を燃焼しつくして停止させている。航空ピストンエンジンの場合には,その後の地上作業の安全のために,なるべくシリンダ内および吸気系統に燃料を残さないようにしている。うっかりマグネト・セレクタの操作でエンジンを停止してしまった場合には,ドライ・モータリング(掃気)で余分な燃料を排出している。

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