2023年1号「技能と技術」誌311号
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表2 BOTH状態における点火プラグの状態[仮定]に対する操作後(R又はL)の回転数の概算(2000RPMから1900RPMに低下)単純理論「固定ピッチプロペラの必要パワーは回転数の3乗に比例する。」を適用すると,デュアル点火(2重点火)に対し,シングル点火(単独点火)では約14%の出力低下となることが分かる。150RPM程度低下し,回転数が不安定で回転計が8本の点火プラグのうち1本が失火している場合,約250RPM低下する。(2000RPMから1750RPMに低下)頻繁に起こり,激しい横振動を伴う。2本が失火している場合,約450RPM低下する。(2000RPMから1550RPMに低下)まれに起こる程度である。同様に激しい横振動を伴う。経験が必要であるが,この不具合を事前に察知することは,前述AおよびBのMAPおよびEGTの値を注意深く見ることで可能である。この不具合が起きたときの対処として,比較的混合比の薄い中出力・高回転でしばらく運転して,点火プラグの汚染を取り除く操作を行っている。それでも改善しないときにはエンジンを停止し,プラグを取り外して清浄にする必要がある。E:4⑤ キャブレターヒーティング・チェックこの点検は,気化器の凍結防止のためのヒーターが作動することを確認している。キャブヒート・レバーを手前いっぱい(HOT)に引き,回転数が低下することおよびCAT(気化器空気温度)が上昇することをもってヒーターの作動を確認している。通常,回転数は約150RPM低下する。約21%の出-20-振れ,時々横振動を感じる状態になった場合は,点火プラグが時々失火している状態で不具合の兆候である。操作前(BOTH状態)の点火プラグの状態を仮定し,RまたはLに切り替えたときの回転数の変化についての概算値を表2に示す。力低下となる。燃焼用空気の流路が変わり流れの抵抗が増加することによる混合気の容積流量・MAPの低下,さらに吸気温度の上昇による質量流量の低下が加わり大きく出力が低下する。MAPの値は一時的に低下するが,その後の回転数の低下・流速の低下に伴う静圧の上昇により,ほぼ操作前の値に戻る。F:4⑥ ミクスチャ・チェックこの点検は,気化器において空気・燃料混合比(空燃比)を変化させ,巡航時に適正な混合比に調整できることを確認している。ミクスチャ・レバーは巡航時以外の運航中はフルリッチ(最前方)に置く。エコノミークルーズ(燃費優先・60%出力)の場合には,レバーを手前(リーン側)に操作し,EGTがピーク(最大値)になる所に置く。パフォーマンスクルーズ(時間優先・75%出力)の場合には,EGTがピークの位置から前方(リッチ側)に戻し,EGTが75°F下がる所に置く。各種状態におけるミクスチャ・レバーの位置および操作について,表3にまとめて示す。

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