2023年1号「技能と技術」誌311号
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が十分であり電圧が維持できていることを確認している。3.5 点検表3-Bフューエルセレクション・チェックこの点検は,安全のためフューエル・セレクタ(燃料選択弁)オフにより燃料が遮断できることと,左右燃料タンクの切り替えがスムーズに行えることを確認している。3.6 点検表4エンジン・ファンクションテスト(機能試験)A:4① 回転数2000RPMにおけるMAP(吸気圧力)の値この値は,標高が低い地点で通常の大気圧力の状態では16.5~17.5in-Hgである。この値が17.5in-Hgを超えている場合は何らかの不具合を抱えている。低ピッチ(羽根角11°30´)のプロペラを2000RPMで回すために必要な出力を得るのに,正常よりスロットルを開いていることになる。多くの場合は点火プラグの失火が原因である。1[in-Hg]=3386.388[Pa]B:4② 回転数2000RPMにおけるEGT(排気ガス温度)の値この値は,前述と同じ条件で1350°F~1375°Fが正常であり,1400°Fを超えている場合は何らかの不具合を抱えている。前述と同様,正常よりスロットルを開いていることになる。多くの場合は点火プラグの失火が原因である。[°Fの値]=[℃の値]×1.8+32C:4③ プロペラ・チェックこの点検は,プロペラ・ガバナーの機能が働いていることを確認している。現在プロペラ・レバーはフルフォワード(最前方),すなわち選定回転数は2700RPM,実回転数は2000RPM,従ってガバナーはアンダースピード状態である。プロペラ・レバーを手前に引き,選定回転数を現在の実回転数2000RPMより下げることにより,ガバナーをオーバースピード状態にしてプロペラ羽根角を増加させ実回転数が下がることをまず確認している。そしてプロペラ・レバーを前方へ戻すときに-19-は選定回転数を実回転数より上げたことになり,ガバナーをアンダースピード状態にしてプロペラ羽根角を減少させ実回転数が上がり2000RPMに戻ることを確認している。この操作は,回転数を下げることが目的ではなく,正しく回転数が変化することが確認できればよいので,必要以上に回転数を下げないようにするべきである。TB10型では1500RPM以下にしないように注意書きがある。後述の「連続運用禁止範囲」と関係してくる。D:4④ マグネト・チェックこの点検は,全8本の点火プラグが正常に点火できているかどうかを確認している。マグネトとは点火専用の発電機であり,独立して2個(RマグネトとLマグネト)装備されている。各シリンダの1本の点火プラグはRマグネトに,もう1本の点火プラグはLマグネトにつながっている。マグネトの切り替えスイッチとしてマグネト・セレクタがあり,TB10型の場合は次の各位置(5ポジション)がある。OFF :両マグネト無効L R BOTH :両マグネト有効(START:スターターオン PUSH必要)通常はBOTH位置で運転している。このマグネト・チェックではRおよびLに切り替えたときの回転数の低下量によって点火状態の良しあしを判断している。正常な状態では約100RPM低下する。:Lマグネトのみ有効:Rマグネトのみ有効

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