2023年1号「技能と技術」誌311号
18/44

表1 TB10型の動力関係操作レバーレバーの位置によって定まるものは,スロットル・バルブの角度のみであり,エンジン出力・トルク・MAP(吸気圧力)・回転数ともに定まらない。そのためスロットル・レバーの位置(スロットル・バルブの角度)を表現する場合には「スロットル開度」と記すことが多い。確実に言えることは,レバーを前へ進めたときにはエンジン出力・トルク・MAPは増加し,手前に引いたときにはエンジン出力・トルク・MAPは減少することである。出力=トルク×回転角速度(回転数)の関係があるが,各単位系の標準単位でこの関係を表現すると,次のようになる。①SI単位系:出力(W)=トルク(N・m)×角速度(rad/s)②メートル法重力単位系:出力(PS)=1/716.2×トルク(kgf・m)×回転数(RPM)③ヤードポンド法重力単位系:出力(HP)=1/5252.1×トルク(ft・lb)×回転数(RPM)ピストンエンジン飛行機の計器として「回転計」は必ず装備されているが,「出力計」「トルク計」は装備されていない。代わりに可変ピッチプロペラ機においては「MAP(吸気圧力)計」が義務装備となっている。可変ピッチプロペラ機の操縦士は高度(外気温度),回転数およびMAPの値から現在出力を捉えている。同高度(同温度)においてトルクはMAPに比例しそうであるが,文献[1]による実機性能表を見る限り比例はしていない。残念ながらMAPの値か-16-らトルクを知ることはできないが,性能表により出力レートと回転数とMAPの関係が与えられたものについては算出したトルクとMAPの関係を知ることができる。スロットル開度に連動して動くものとして,加速ポンプ・エコノマイザ・アイドルバルブ・メタリングシャフト等があるが,本題ではないので省略する。2.2 プロペラ・レバー操縦席のプロペラ・レバー(青)の操作により最終的に動くものは,プロペラ・ガバナー内のスピーダスプリングの頭部側(上側)の位置である。プロペラ・レバーの位置によって定まるものは「選定回転数」である。そのためレバー横の固定部に回転数の目盛りがマーキングされている機種もある。2.3 ミクスチャ・レバー操縦席のミクスチャ・レバー(赤)の操作により最終的に動くものは,さまざまな方式に対してさまざまな呼び名があるが,1つのバルブである。いずれも燃料流量の微調整を行うものであり,燃料遮断も兼ねている。ミクスチャ・レバーの位置によって定まるものは,各種バルブの「燃料流路の開度」のみであり,燃料流量・混合比(燃空比)ともに定まらない。確実に言えることは,レバーを手前に引いたときには混合比は薄くなり,前に進めたときには混合比は濃くなることである。2.4 TB10型の操作レバーソカタ式TB10型(フランス製・単発ピストンエンジン飛行機)の動力関係操作レバーの概要につい

元のページ  ../index.html#18

このブックを見る