2022年4号「技能と技術」誌310号
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図3 感電体験装置の回路図図4 配線用遮断器と漏電遮断器電中の電流値を計測し,それが最大0.65mAで10秒を超えないように回路を設計した。人体との接触部は電気導電率が高く,加工が容易な銅板とした。また,接触部と本体装置の筐体とはアクリル板を介して絶縁した。図3は,本装置の回路構成である。回路は100V電源が配線用遮断器および漏電遮断器を介してトランスおよび誘導電圧調整器(IR)に接続される構造となっている。二次側にはリレーおよび保護抵抗を介して感電体験部につながっているほか,電流および電圧を表示する計測器が接続されている。(4)(5)トランスには100V電源を50Vに降圧するものを用いた。なお,トランスは一次と二次が絶縁されており,二次側に接触する人体が仮に地面にアース状態になったとしても,それによって危険な電流は流れない。ここで,保護抵抗は最大通電電流値の制限を与えるほか,整流平滑回路を介してマイコンに送られる電圧・電流関係に関与する抵抗となる。本装置では4.3kΩの抵抗を選定した。これは50Vの印加電圧の状態で,負荷側が短絡した場合におよそ11.6mAの電流が流れる抵抗である。この電流値はごく短い時間であれば図1のAC-2の範囲にあり,さらに人体の電気抵抗があることを考えると,問題のない設計になっていると言える。なお,図4は電線や器具の劣化が発生した時の対策のために,配置した配線用遮断器と漏電遮断器の写真である。漏電遮断器には高速形,感度電流-7-15mA以内,動作速度0.1秒以内,感電防止対応機能付きのものを採用した。4.2 マイコンによるリレー制御部2章における事前調査に基づき,感電体験部に流れる最大電流および時間を0.65mA,10秒に設定した。これを図3に示すようなマイコンとそれによって制御されるリレーにより回路の開閉を行った。まず,整流平滑回路を介して4.3kΩの保護抵抗(電流を計測するためのシャント抵抗に相当)の両端にかかる電圧をマイコンに取り込み,保護抵抗に流れる電流を算出した。誘導電圧調整器を少しずつ回して徐々に電圧を上げていき,保護抵抗間の電圧が所定の電圧になったところで時間計測を開始する一方,電流値をモニタリングし,通電時間もしくは電流値が上記設定値を超えるまでリレーを通電状態とする。そして,時間もしくは電流値が設定値を超えたところでリレーがオフとなる構成となっている。被験者はこの間に感電を感じ,その際の電流値を確認できる構成となっている。図5に作成したマイコンプログラムのフローチャートを示す。図中のA/DとはA/D変換された電圧値を意味している。初期状態でリレー接点は開いているが,感電体験装置の電源ボタンを押すとマイコンはそれを検知し,リレーをオン状態にする。この際,A/D変換電圧が0.4V以下であればLEDを点滅させる。この電圧検知を2MHz,0.5μs間隔で行い,0.4Vになったところで時間計測を開始すると同時にLEDを点灯状態にする。その後,電流計測を継続し,電圧が2.42Vを超えるか,もしくは経過時間が10秒になったところでリレーをオフとする

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