2022年4号「技能と技術」誌310号
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表2 許容接触電圧図2 感電体験部(ハ)心室細動電流(AC-3以上の領域)心室細動の発生する電流を心室細動電流といい,AC-3からAC-4の境界あたりが発生領域となる。いったん心室細動が発生すると,他人が充電部分を除去しても一般には心室細動は収まらず,死に至る電流値である。この値は通電経路が左手-両足の場合に,曲線c1に対応している。すなわち,通電時間が10msで通電電流が500mA,500msで100mA,1sで50mA,10sで40mA程度の値となっている。図1によると,AC-3の範囲は人体への長期障害は生じないが,一時的な呼吸困難や心臓障害などが生じる可能性がある。また,AC-4の範囲は心停止や重度の熱傷などが加わり,大変危険である。そのため,安全に感電体験を行うには,AC-3領域は確実に避け,AC-2の範囲内で適当な条件を求めるのが適当といえる。本総合制作実習では,数名に対してAC-2領域内における予備感電体験実験を行い,被験者のいずれもが許容の範囲内でピリッと感じる電流値として0.65mA程度が適当であることを確認した。これは図1において線aのごく近傍にあり,IECのデータともよく対応した安全側に位置していることがわかる。そこで,本感電体験装置の最大電流値を0.65mAとして,設計を行うことにした。感電現象は電流によって決定され,電圧の大きさは二次的な要素となる。しかし,装置の安全性を担保する上で,印加する最大電圧を理解しておくべきである。人体に危険とならない電圧値を国によっては,安全電圧と称し,異なった値が提示されている。ドイツ,イギリスでは24V,オランダでは50Vになっている。また,大地に立っている人が充電部に触れて電撃を受けたとき,人体に加わる電圧を接触電圧という。(社)日本電気協会の低圧電路地絡保護指針によれば,表2のように人が接触する状況に応じて許容接触電圧が提示されている。(1)(3)-6-本総合制作実習では,手が水で濡れていない状態で片方の手のひらのみによる感電体験装置の使用を想定しており,さらに上述した0.65mA以下となるように別途制限を回路的に講じるので,印加できる最大電圧を50Vとして本装置の開発を行うこととした。4.1 主要回路構成感電体験装置の接触部に関して,図2のように右手の指2本を置く構造とした。これは通電領域が片手の手のひら内に収められ,心臓を通るような電流を生じさせないためである。この感電体験部に対して,最大AC50Vが印加される構造とする一方,通3.印加最大電圧値の設定4.開発した装置の回路および全体構成

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