2022年4号「技能と技術」誌310号
7/30

表1 感電災害の発生状況図1 IECによる感電と人体反応領域図(15~100Hzの正弦波交流)(出典 IEC TS60479-1:2005, 第4版)北海道職業能力開発大学校 木村 天津郎日本国内において,感電災害のために表1のように毎年死傷者が出ている。2019年では89人が感電し,うち3人が死亡した事故が発生している。主な原因として,漏電,絶縁不良などによる設備的な要因や,作業者の誤った操作,絶縁防護具の不備などによる人為的な要因が挙げられる。そこで,本校の専門課程・電気エネルギー制御科における総合制作実習課題の一つとして,電気を扱う人の安全意識向上のために簡単な操作方法で安全な範囲内で感電を体験できるような装置の開発を行った。以下に許容電流ならびに通電時間の選定,および装置の概要について報告する。人体に電流が流れたとき,本人が感電していることを感知する電流値,苦痛を伴いながらも自分の意-5-志で通電部分から離れることができる電流値,さらに心室細動で死亡事故に至る電流値に関して,国際電気標準会議(IEC)において図1のように報告されている。(1)(2)(3)(イ)感知電流(AC-1領域)(ロ)離脱電流(AC-2領域)本人が直接感知できる最小の電流を感知電流と言い,図1におけるAC-1の領域に対応している。通電時間に関係なく0.5mA(直線a)が境となっており,それ以下では感電を感じない領域となる。誤って通電部分をつかんでも,自分の意志で離すことができる最大の電流を離脱電流と言い,図1における折れ直線bが境界となっている。通電時間が長くなると離脱電流は減少し,5mA(成人男子では10mA)になると通電時間にかかわらず同様な感電感覚となる。1.はじめに2.最大電流値の選定―_感電体験装置の開発_―安全意識向上への取り組み

元のページ  ../index.html#7

このブックを見る