2022年4号「技能と技術」誌310号
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職業能力開発総合大学校では,職業訓練指導員を対象とした経験年数に応じた階層別研修を設けている。初任層(業務経験5年程度)の訓練指導員(以降,指導員)向けの研修では,研修の受講生に対して,所属施設の安全衛生に関する課題・問題点についての事前調査を行った。その結果,訓練受講生が指示を聞いてくれない,説明した手順ではなく自己流の手順で作業してしまう等の不安全行動につながる回答が半数以上であることが確認できた。階層別研修では技能・技術や関連知識等を補完することで,訓練受講生の抱えている訓練実施上の課題・問題点を解消できることが望ましい。しかし,訓練実施状況は所属施設によってさまざまであり,同じような悩みでも原因は別にある可能性がある。本稿では,初任層向けの研修でPROBEモデル[1][2]を用いて以下a,bの2点について分析・考察した結果を示す。a)訓練受講生の不安全行動の原因b)初任層向けの研修の効果PROBEモデルは,作業の効率や遂行等のパフォーマンスの妨げとなる要素を明示化して分析するもの-1-である。aではそれぞれの訓練実施状況に受講生の不安全行動の原因を特定すると同時に,何をするべきなのか気づきを得ることが可能であると考えられる。bでは研修の前後でPROBEによる分析を行い,結果の変化から研修の効果を考察した。PROBEモデルは労働者が報酬を受け取って行う作業のパフォーマンスの妨げとなっている要素を見つけ,改善する事を想定している。例えば文献[2]では,顧客が希望する商品の希望リスト見てパッキングするというライン作業において,入れる商品の種類と数量の間違いの原因を特定し,改善案を提案している。PROBEモデルは表1に示す行動カテゴリーに基づくYesかNoで答えられる作業者の環境に関する質問(A~F)と作業者の行動レパートリーについての質問(G~I)で構成され,Noとなった項目がパフォーマンスを妨げている要素とする。本稿ではPROBEモデルを用いて訓練受講生の不安全行動の原因を特定するため,項目の文言の変更や削除することで訓練の安全行動向けに応用した。作成した訓練向けPROBEモデルを表2に示す。PROBEモデルは原因を特定のみで解消する方法を示さない。そのため,なぜその質問項目がNoと1.はじめに2.訓練向けPROBEモデルPROBEモデルを用いた訓練生不安全行動原因特定と安全衛生研修効果の分析と考察職業能力開発総合大学校 蓮實 雄大職業能力開発総合大学校 中村 瑞穂長岡技術科学大学 北條理恵子コレムラ技研 是村 由佳

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