2022年4号「技能と技術」誌310号
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図9 インバータ制御のファン入出力特性図10 インバータ制御のファン効率〈参考文献〉制御の消費電力を比較したものである。このグラフより,風速10m/sを基準としてその風速を下げていくとき,ダンパ制御の場合では消費電力はわずかに上昇していく一方,インバータ制御では,大幅に消費電力が減少していく様子が確認できる。一般には,消費電力は風速の3乗に比例することが知られているが,同図より本実習装置における消費電力は,風速の2乗程度までしか低減していないことが確認できる。これは,風速の減少によって風車効率も低減したためであると考えられる。図7には,ファンの機械入出力特性を示す。ファンの機械入力(軸動力)は,図7でもみたとおり風速が下がるにつれてわずかな上昇がみられるが,ファンの機械出力(ファン動力)は,ダンパが全開である風速10m/sを除けば,ほぼ一定であるとみなすことができる。また,図8には,ダンパ制御の場合のファン効率を示す。ファン効率は,風速9m/s程度が最も高く,山型になっている様子が確認できる。インバータ制御の場合のファンの入出力特性を図9に示す。同図より,ファ-20-[1]五十嵐智彦,子川昌浩:「負荷特性に応じた汎用インバータの取扱いに関する実習教材」,技能と技術2019年1号,2019[2]梶島岳夫:「流体工学の基礎」,森北出版,2022[3]省エネルギーセンター:「省エネルギー手帳2021工場技術者必携」省エネルギーセンター,2021ン動力,ファン軸動力ともに,風速が小さくなるとともに,急激に減少している様子が確認できる。ただし,ファン動力(機械出力)はおおむね風速の3乗に比例している一方,ファンの軸動力(機械入力)は風速の3乗よりも大きくなっているようである。これは,風速が小さくなるにつれてファン効率が低減すること,および,インバータのV/f制御におけるトルクブーストの影響が目立つようになったしまったためであると考えられる。図10には,インバータ制御の場合のファン効率を示す。同図より,インバータ制御の場合,低速域では効率が大幅に減少することが確認できる。本稿では,インバータ制御の訓練に供するポンプ実習装置について報告した文献(1)の続報として,ファン実習装置について検討した。本実習装置は,既存の風力発電実習装置をベースに実現できることから簡易に実現でき,かつ,風速制御をダンパ制御とインバータ制御の2通りの特性をおおむね理論通りに再現できることが確認できた。今後は,風速測定の精度向上など,測定値の精度向上について検討する。5.まとめ

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