2022年4号「技能と技術」誌310号
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図3 流体の連続性図4 ピトー管による圧力の測定と比較して無駄が多いとされている。そこで,本装置では,インバータによるファンの省エネ効果を実験的に習得できるようにした。また,現実の設備においてはインバータの導入前にどの程度のファンの省エネ効果が得られるのかの概算ができなければならない。したがって本教材では,ピトー管(静圧管)を設け,内部の静圧を測定できるようにすることによって,ファンの軸動力,および効率までを計算できるようにしている。ファン実習装置で行う主たる実習は,風洞装置に備え付けのファン装置を50Hzで運転したときを基準とし,ここにダンパにより風速を制限した場合と,インバータにより周波数を可変させることにより風速を変更した場合の,それぞれの消費電力を比較し,インバータによる省エネ効果を検討するものとした。本実習装置は,昭和電業社製の屋内風力発電実習装置(KENTAC6901)をベースとした。この装置の風速の吐出口側と吸込口側にそれぞれ着脱可能な形で共板式風量調整ダンパ(フカガワ製VD-TSA600-600および,同VD-TSA800-800)を設置し,ダンパによる風速調整ができるようにした。また,吐出口,および吸込口付近にそれぞれ静圧管(アズワン製PTS-VT6-170)を設け,ダンパの開閉度の変化-18-に伴う内部の静圧の変化を直接測定できるようにした。風速計は,屋内風力発電実習装置に既設であるので,それを用いた。筆者らの検証では本設備では風洞内部の位置による風速ムラが非常に大きいことを確認している。また,本実習装置の風速測定法はJISに規定された風速測定法とも異なる方式が用いられているため,その測定誤差は大きい可能性がある。しかし,相対的な風速の測定は可能であると考えられるため,本稿では本実習装置に既設の風速計をそのまま使用することとした。はじめに,ファンの軸動力の算出についてみていく。ファンで移送する空気が非圧縮流体であると仮定すると,図3に示すような断面積がS1[m2]からS2[m2]に変化する管内における風速v1[m/s],v2[m/s]は以下の連続の式が成り立つことが知られている。ここで,Q[m3/s]は流量である。本実習装置では,図2に示すとおり,風速計が吐出口側のみにしか設置されていない。そこで,吸込口側と吐出口側の断面積から,吸込口側の風速を算出する必要がある。管内の圧力は,図4に示すようにピトー管によって測定することが可能である。同図(a)は,風洞の側面に対し平行に管の端部を設け,流体の圧力エネルギーによってピトー管内に圧力が生じるようにしたものである。これにより測定できる圧力を静圧[Pa]と呼ぶ。また,同図(c)のように,流体の移動方向と同じ方向に管の端部を設け,流体の運動エネルギーによってピトー管内に圧力が生じるようにしたもので,これにより測定できる圧力を動圧[Pa]と呼ぶ。風速と動圧の関係は次式によることが知られている(2)。3.ファンの軸動力の計算

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