2022年4号「技能と技術」誌310号
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九州職業能力開発大学校 齋藤 慎一郎現在、建築において木材を加工する際、木材加工用機械の使用は必須のものであり、作業現場や工場では日常的に使用されている。木材加工用機械の使用により作業効率は大きく向上するが、そのエネルギーの大きさから重大な災害になりやすい。当機構の実習においても、木材加工用機械における災害は後を絶たない。木材加工用機械における災害の発生には、物理的要因の「不安全な状態」と人的要因の「不安全な行動」が関係している。「不安全な行動」は木材加工用機械の安全な使用に関する知識(以下、機械安全知識とする)の不足と、安全を心掛ける意識(以下、安全意識とする)の低さが関係しており、両方が高いレベルにあることが人的要因の排除に対して重要であると考える。そこで、現在実習において実施している安全に対する訓練が、機械安全知識と安全意識の向上にどの程度効果があるのかを検証することとする。2.1. 実習前に実施する安全訓練(入場教育)実習場での作業開始直前に、入場教育として講義形式の安全訓練を行う。ここでは、木材加工用機械の各部名称や安全に使用するための注意事項等を、作業手順書と取扱説明書を用いて説明する。また、木材加工用機械に関する安全表示物を学生に作成し-11-てもらうことで、機械安全知識の定着と安全意識の向上を図る。作業手順書と取扱説明書を用いた講義は1コマ(100分)とし、安全表示物の作成は3コマ(300分)とする。作成する安全表示物の対象機械は、実習でよく使用するパネルソー、自動一面鉋盤、卓上丸鋸盤、角ノミとした。安全表示物の作成については、令和元年度はグループワークにより実施したが、令和2年度はコロナ対策として個人での作成とした。手順は以下のとおりである。①作業手順書を用いた各機械の取り扱い説明(50分)②取扱説明書の確認と重要箇所の拾い出し(50分)③安全表示物内容決め(50分)④安全表示物の作成(200分)⑤作成者によるプレゼンテーション(50分)作成する内容は作業手順書や取扱説明書を参考にして決定することとし、各機械1つ作成することとした。最後に、作成者によるプレゼンテーションを行うことで全体への周知を図った。プレゼンテーション後、投票で優秀な作品を選び、選ばれた安全表示物は実習場に掲示することとした。学生が作成した安全表示物の一例を図1に示す。1.はじめに2.実習における安全訓練実習における安全訓練の訓練効果に関する検証

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