2022年4号「技能と技術」誌310号
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図11 体験装置使用後の感想を頂いている様子〈参考文献〉また,学生にとっては感電という電気学科では重要なテーマに直接取り組み,電気回路の作成に加えてマイコンによる制御についても体験でき,大いに満足しているようであった。電気エネルギー制御科における総合制作実習の一つとして,一般市民が感電の危険性を体験できる装置の開発を行った。最大電流および電圧の設定において,IECによる感電と人体反応領域線図を参考にし,自分たちの体感予備実験に基づいてそれらの値を決定した。装置は商用100Vを電源とし,絶縁トランスによって一次・二次側を絶縁するほか,安全を確保できる電圧値まで降圧した電源をベースとした。これを誘導電圧調整器に接続し,被験者が徐々に電圧を上げる構造となっている。感電体感部は右手指で2カ所を触るようになっており,安全上,手のひら内で通電するように配慮した。通電電流と通電時間をマイコンで計測し,設定した値を超えるとマイコンによってリレーが開放される構造となっている。こうした構造によって,安全な範囲内で感電時のピリピリとした体感と,その際の電圧・電流値を確認しながら,誘導電圧調整器を操作する装置にできた。学内外の人に対して大学校の活動を紹介するポリテックビジョンにおいて本装置を出展したところ,感電時の体感と電圧・電流の関係をリアルタイムで感じ取ることができたことに対して,好評価を得る-10-(1)中央労働災害防止協会:低圧電気取扱安全必携 特別教育用テキスト(2)CRANE-CLUB:感電及び対策http://www.crane-club.com/study/crane/shock.html(3)安全衛生マネジメント協会https://www.aemk.or.jp/text_teiatsu/text_teiatsu1-1c.html(4)株式会社明電舎:明電時報 通巻327号 2010 Vol.327 危険体感教育への取り組み(5)株式会社昭和電工:感電体験装置KENTAC4250説明書この記事は「北海道職業能力開発大学校紀要第37号(令和4年2月)」に掲載されたものです。ことができた。また,本学科では所定の科目を習得した学生に対して労働安全衛生法で定められた低圧電気取扱特別教育の修了証を発行しており,その教育に関しても貢献することができた。さらに,開発に取り組んだ学生にとっては電気回路の作製に加えてマイコンによる制御についても体験することができ,彼らの学習に対して大いに寄与することができた。今後,本装置を低圧電気の特別教育用教材として活用するほか,一般市民に対する感電災害理解の増進に利用していきたいと考えている。なお,本装置ではマイコンに接続していながら被験者が手を離す際の電流値や通電時間の記録がなされていない。今後こうしたデータを記録する機能を付加し感電感覚に関する被験者によるばらつき分析を行うなど,さまざまな解析を試みたいと考えている。本論文作成にあたり,北海道職業能力開発大学校の近久武美校長にご助言をいただいた。ここに特記して感謝申し上げます。併せて,1年間,積極的に令和2年度の総合制作実習に取り組んでくれた本校電気エネルギー制御科2年生の河村翔平君および小森鉄馬君に感謝いたします。6.まとめ謝  辞

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