2022年3号「技能と技術」誌309号
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図9 ダイポールアンテナとモノポールアンテナ図10 逆L型アンテナとT型アンテナ図11 逆L型アンテナの指向性(12)図12 アンテナの架設(本校の屋上)鉱石ラジオには,空中線(アンテナ)と接地極(アース)が必要である。アンテナとアースは,受信性能を大きく左右することになるので,慎重に作成する必要がある。AMラジオ用のアンテナとしては,電界により動作するものと,磁界により動作するものがある。電界により動作するものとして最も基本的なものはダイポールアンテナである。図9の左側がダイポールアンテナの模式図である。これは,2本の長さが等しい金属棒を同一線上に並べたもので,このアンテナ長の半分の長さの波長の電波を受信するときに,最も効率よく機能するものである。図9の右側に示す,モノポールアンテナの場合は,1本の金属棒を設置に置き換えたもので,基本的な仕組みはダイポールアンテナと同様である。特に,AMラジオ放送の電波は垂直偏波であるため,基本的には大地に対して垂直にモノポールアンテナを設置することが望ましい。しかし,電波波長は数100mであり,その波長に相当したアンテナを垂直方向に設置することは困難である。そこで実際には,逆L型アンテナやT形アンテナが好んで用いられた(図10)。文献(10)では,『空中線の感じは,接地點から測つた空中線水平の部分までの平均の高さで定まります。之が高い程よく感じます。水平部は單に波長を延ばす爲であつて,感じには餘り影響しません』とあり,基本的には水平部の長さよりもその高さのほうが重要であるとされる。水平部の長さについては,数mから10数m程度とされることが多いようである(9)。このようなアンテナの場合は,木や住宅の外壁等を用いて電線を水平に渡し,逆L型アンテナの場合はその一端に,T型の場合はその中点にはんだ等で給電線を接続したうえで,室内に引き込む構造となっている(11)。さらにより効果的に受信するために,水平に渡す電線を3~5本平行に配置し,それを給電点で接続することで,多線式アンテナを構成するとよいとしている文献がある(6)。これは,アンテナと大地間の静電容量を増大させ,アンテナに流れる電-31-流を増大させることができるためである(12)。T型アンテナの場合,水平方向においては無指向性と考えられるため,アンテナを張る方向について考える必要はない。一方,逆L型アンテナにおいては,図11に示すような指向性を有し,アンテナの水平部分の銅線が張り出しているのと逆方向で最も感受する電波が多くなる(12)。したがって,アンテナの水平部を送信所の反対方向へ向けるとよいといえる。4.空中線(アンテナ)

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