2022年3号「技能と技術」誌309号
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図1 制作したラジオ受信機の回路図千葉職業能力開発短期大学校 五十嵐智彦  佐藤 玲子川口 航大  岡田 愁翔加藤 鈴乃1925年(大正14年)にAMラジオ放送が開始され,3年後の2025年には放送開始100周年を迎える(1)(2)。筆者らは,総合制作実習(専門課程・電気エネルギー制御科)の一環として,およそ100年前の書籍や資料を調査し,放送が開始された大正14年当時の受信機を制作することとした。本稿では,筆者らが前号(3)にて報告した,歴史調査,ならびに鉱石検波器の制作の続報として,可変容量蓄電器(バリアブルコンデンサ)と,線輪(コイル),空中線(アンテナ),接地(アース)について報告する。今回制作したラジオ受信機の回路図を図1に示す。受信した電波の信号から,特定の周波数の放送のみ選択する回路を同調回路という。初期のラジオ受信機の同調回路は,コイルとコンデンサの並列回路から構成される。アンテナで受信した高周波信号は,この同調回路で選択され,特定の周波数の信号のみ(すなわち,特定の放送局の周波数の信号のみ),受話器のほうへ通ずるようにする。-28-放送開始当時の受信機では,コイルを固定式としてコンデンサの静電容量を変化させるか,コンデンサを固定式としてコイルのインダクタンスを変化させるかのいずれかの方法により,同調周波数を変化させていた。ここで,静電容量の大きさを変化させることができるコンデンサのことを「可変容量蓄電器(バリアブルコンデンサ)」とよぶ。インダクタンスの大きさを変化させることができるコイルには,「バリオメータ」(4)と「バリオカップラ」(5)の2種類がある。バリオメータは円筒形コイルの中にこれと直列接続されたさらに小さな回転式の円筒形コイルがあり,内部コイルの角度によって,2つのコイルの結合(相互インダクタンス)が変化し,全体のインダクタンスが可変できる仕組みとなっている。バリオカップラは,磁気的に結合された2つのコイルが並列に接続されており,その距離等を調整することで結合状態(相互インダクタンス)が変化し,全体のインダクタンスが可変できるようになってい1.はじめに2.可変容量蓄電器(バリアブルコンデンサ)100年前の文献から読み解く鉱石ラジオ教材の制作 その2〜AMラジオ放送開始100周年に際して〜

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