2022年3号「技能と技術」誌309号
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国立吉備高原職業リハビリテーションセンター 上西 能弘わが国には職業訓練(ハロートレーニング)を行う施設が多数存在し,仕事の知識や技能を習得する意欲を持った方々に対して,スキルアップの機会を提供している。運営形態を軸に大別すると,公共職業能力開発施設と民間の職業能力開発施設に分けられる。そのうち公共職業能力開発施設については239校が存在し,設置主体が国,都道府県,市町村,独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構(以下「機構」という。)となっている施設にそれぞれ分類される。私が現在所属する国立吉備高原職業リハビリテーションセンター(以下「吉備校」という。)は職業能力開発促進法に基づき,国が設置する障害者職業能力開発校としての側面と,障害者の雇用の促進等に関する法律に基づき,国が設置する広域障害者職業センターとしての側面を併せ持つ施設であり,機構が運営する国立機構営校である。私の職業訓練指導員としてのキャリアは,同じく国立機構営校である国立職業リハビリテーションセンター(以下「所沢校」という。)でスタートし,これまで職業訓練や就職支援,そして指導技法等提供に係る業務(以下「指導技法普及」という。)に携わってきた。平成30年度より所沢校内において,国立機構営校としてのミッション,指導技法普及を専任する課として「導入訓練・技法普及課」が設置され,課の立ち上げからスタッフとして参画することとなった。以降三年間に渡り,全国にあるさまざまな職業-1-能力開発施設に対して指導技法普及を行った。そして本年度より,吉備校にて訓練第二課職域開発系担当の職業訓練指導員を拝命し,訓練生の職業訓練と,指導技法普及に取り組んでいる。近年,指導技法普及に関する業務は拡大し続けており,傾向としては,障害種別に特化した内容だけでなく,訓練生個々の障害を含めた特性に対応した指導技法普及を望む声が高まっている。また,平成28年7月に厚生労働省がとりまとめた「職業能力開発施設における障害者職業訓練の在り方について(障害者職業能力開発校の在り方に関する検討会報告書)」において,身体障害者を主な対象とする訓練科においても精神障害や発達障害を併せ持つ訓練生が増えている状況が述べられており,訓練生個々の障害特性に合わせた訓練指導のノウハウ提供が求められている現状がある。また,昨年度以降,新型コロナウイス感染拡大による影響により,従来の指導技法普及の方法だけでは,ニーズを満たすことができず,運用方法・考え方に至るまで大いに見直す必要が生じた。その過程で検討された内容については,新型コロナウイルス対策期間中だけに限定せず,平時における指導技法普及にも活用していくことで,より柔軟なノウハウ提供の機会を提供できることが明らかになった。当機構におけるこれまでの指導技法普及に関する取組について整理し,俯瞰することにより,職業能力開発における指導技法等提供の意義と有用性,副次的効果について検証し,今後の展望について論ずることとした。1.はじめに第31回 令和3年度 職業能力論文コンクール 特別賞(独立行政法人 高齢・障害・求職者雇用支援機構 理事長賞)受賞職業能力開発における指導技法普及の意義と有用性

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