2022年3号「技能と技術」誌309号
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職業能力開発総合大学校 基盤整備センター 在職者訓練開発室 大野  武吉岡 央雄近年,障害者雇用では,精神障害者を法定雇用率の算定基礎に加えるとともに,民間企業における障害者の法定雇用率が2.3%にまで引き上げられる等の措置が講じられてきた。また平成28年7月にとりまとめられた「障害者職業能力開発校の在り方に関する検討会報告書」の提言で,在職障害者の公共職業訓練(以下「在職者訓練」という。)は,一部の障害者職業能力開発校(以下「障害者校」という。)と民間企業等を活用した障害者委託訓練(以下「委託訓練」という。)により実施しているが十分ではなく,拡充を検討することが必要である旨の指摘がされている。本研究では,在職障害者を雇用する企業が実施している研修状況等を把握し,企業ニーズ・課題や効果等を明らかにするとともに,各都道府県の在職者訓練の実施状況等を把握して,障害者校,委託訓練における在職者訓練の今後の方向性等を検討することを目的とした。障害者雇用については,「障害者の雇用の促進等に関する法律」における雇用義務制度によって,雇用促進をはかってきていたが,平成25年の法改正において,差別禁止と合理的配慮の提供義務制度が導入されて,現在では,ふたつの制度が両輪となって-19-雇用促進をはかっていると考えられる。在職者訓練は,職業能力開発促進法(以下「能開法」という。)に基づいて,障害者の特性にあった職業訓練を実施しているところである。また公共職業訓練では,障害者の多様なニーズに対応した委託訓練などを促進してきている。障害者を対象とした職業訓練の実施は,一般の職業能力開発校(以下「一般校」という。)と障害者校等で行われ,以下のように整理できる。・一般校で障害のない方と一緒に受講する職業訓練・一般校を活用しての障害者を対象とした職業訓練・障害者校で障害特性に配慮した職業訓練・障害者の多様なニーズに対応した民間に委託しての職業訓練本研究は職業能力開発施設等から研究会委員を招集し,2年間で4回の研究会とアンケート調査およびその補完としてヒアリング調査を実施した。アンケート調査は,プレ調査結果等および研究会の議論を踏まえ,以下のことを明らかにするために実施した。①企業が実施している在職者訓練の現状,ニーズ等や在職障害者の就労状況に応じてのスキルアップの現状等のアンケート調査(企業編)調査対象は,帝国データバンクの保有する企業名簿の中から,一般企業(従業員44名以上の企業(事業所))を地域分布・業種分布を考慮して7,531社を1.はじめに2.調査研究の背景3.調査研究の概要と方法在職障害者に対する職業訓練に係るニーズ等に関する調査研究

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