2022年3号「技能と技術」誌309号
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大阪府立夕陽丘高等職業技術専門校 訓練支援室 奥野 隆久大阪府立夕陽丘高等職業技術専門校では,一般の離転職者を対象とした職業訓練3科目(以下「一般科目」という)と併せて,障がいのある方を対象とした職業訓練3科目(以下「障がい科目」という)を設置し,同一施設の中で日々の訓練を実施している。大阪市内の中心部に位置し,公共の交通網が整った立地にあるため,訓練生にはとても通いやすく,府内全域より通校されている。障がい科目として,知的・精神・発達それぞれの障がい種別ごとの科目を設置し,訓練生個々の障がい特性や就労経験,本人の希望職種などを踏まえ就職支援を実施している。一般校の中に障がい科目を設置しているため,心理士や精神保健福祉士など専門職員を配置し,訓練生の受講の際に生じるさまざまな体調の変化や不安,困りごとなどに対応できる体制を整備し,適宜個別面談等を実施している。面談の内容により適切に担当指導員とも情報を共有し,障がいのある訓練生が安定して訓練を受講できるように環境とし,校全体としてチーム支援できる体制を構築している。併せて,一般科目を担当する指導員からも課題のある訓練生対応への相談など専門的な視点からのアドバイスを行い,指導への助言と指導員のメンタルケアについても担ってもらっている。近年,一般科目の訓練生の中にも入校後間もな-14-い頃(おおむね一週間程度)より,訓練生活という新たな環境への変化に心身の対応が追い付かず,無自覚のまま体調不良となる方や,クラスメートとの人間関係に悩みを抱えメンタル不調を生じる方,また,訓練に遅れが生じ目標としていた就職への不安が高くなる方等が散見される状況で,そうした訓練生の適切な状況の把握や訓練継続に困難性の高い場面への対応等,担当する指導員の対応力と指導力の強化が求められており,課題となっていたところである。本府ではこれまでこうした指導員の課題への取り組みとして,平成19年度より『カウンセリング検討会』を立ち上げ,全指導員を対象に困難性の高い訓練生への対応(以下「困難事例」という)の経験を持ち寄り,専門の講師(臨床心理士でスクールカウンセラー)を招聘し,指導や対応についての検証を行うことで,今後の対応法の習得に向けた研修を進めてきたところである。また,この他にも一般科目の指導員を対象に,障がい科目体験研修として精神・発達障がい科目の訓練に参加してもらい,障がいの理解と障がいのある訓練生の特徴と特徴に応じた対応法について知ってもらう取り組みを行ってきた。今回,令和2年より厚生労働省の委託事業として受託した「職業能力開発校(一般校)における精神障害者等の受け入れに係るノウハウ普及・対応力強化事業」(以下「ノウハウ普及事業」という)を活用した取り組みについて報告させていただく。1.はじめに一般校における困難性の高い訓練生への対応力・指導力の強化について

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