2022年3号「技能と技術」誌309号
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図9 ジョブカード,就労パスポートの活用例について図10 訓練生の指導・支援に必要な職員のスキルについて(ロバート・カッツによる分類[9]をもとに作成)ある。そのためには各訓練生が知識・技能を身に付け,自分の特徴やアピールポイントについて,ジョブカード[7]や就労パスポート[8]などを活用しながら整理し,職場や,場合によっては支援機関や医療と円滑に情報共有し,地域社会全体で訓練生一人一人を支援できる仕組みが不可欠である。職業訓練を担当する者は,訓練生を指導・支援する上で,訓練生の良き理解者として存在しなければならない。訓練生の知識・技能習得を最大限にサポートしながら,時には職場の上司の様な立場で職場のルールが意識・順守されるような働きかけを訓練生に行い,時には企業との間に立ちながら訓練生の就職をサポートする等,場面に応じた適切な対応が求められる。指導技法普及はそれらの取り組みが円滑に行われる様,職業訓練に関わる施設や職員を支援する役割として存在意義がある。指導技法普及は,日々訓練生と向かい合い,さまざまな悩みや困り事を持っている職員や,訓練コース設置や,訓練科のカリキュラムの改善に向けて取-12-り組んでいる施設全体への支援であり,同時に各施設で訓練に励む訓練生への間接的な支援でもある。各職員のテクニカルスキル(専門的知識・技能)に加え,指導技法普及を通して,ヒューマンスキル(対人関係能力)やコンセプチュアルスキル(概念的能力)を高める事により,訓練生への指導力・支援力を向上させ,より大きな訓練効果を生み出す事が可能となる。また,施設に対する指導技法普及を通して,効果的な取組や課題について,職員が個々に孤立する事なく,施設全体で情報共有しながら取り組んでいくことが可能になる。指導技法等普及を通じて,全国にあるさまざまな職業能力開発施設へお伺いし,各訓練施設における訓練生対応や訓練運営についての状況を伺うことができた。その中で常に目にしたのは,訓練生の個々の状況に向き合いながら,何とか技能習得や就職に向けた前進ができないものか現場で奮闘される職員の皆さんの姿であった。またそうした状況を施設全体でサポートし,より良い取り組みにしていこうとする施設全体のチームワークであった。指導技法普及は所沢校,吉備校での職業訓練の成果を体系化し,他の職業能力開発施設などへ提供するものであるが,提供したノウハウが,手が加えられ,改良されることにより,施設独自のノウハウとして蓄積されていくのである。その過程を共有できることは指導技法普及担当者にとって,この上ない学びの機会である。一人でも多くの方が職業訓練の機会を得ること6.おわりに

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