2022年2号「技能と技術」誌308号
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図5 StrategicManagementCycle<参考文献>本稿では,日本の製造産業の産業競争力強化を図る上で,職業能力開発が重要な役割を果たすことを指摘すると共に,今後,職業能力開発に関する最高学府として「学理の究明と応用」に全教職員が一丸となって取り組むことを提案した。本稿で主張したいと考える結論は,以下の3項目に集約される。(1)「技能・技術」・「知識」・「姿勢・態度」の3要素から構成される職業能力を定義すると共に,今後,3要素の相互作用を考慮した職業能力の解明が必要であることを述べた。(2)日本の製造産業の産業競争力強化を達成する上で,職業能力開発に関する学理の究明とそれに基づく職業能力開発機能の強化が必要不可欠であることを指摘した。(3)日本の製造産業の産業競争力強化策として,一連の職業能力開発の戦略的マネジメントサイクルを提案した。今後,わが国唯一の職業能力開発に関する最高学府として,「職業能力開発に関する学理の究明と応用」を新たにミッションに加えて,高度人材の育成と社会への輩出に取り組むこと,職業能力開発の体系化および新たな学術領域の確立をめざして,提案した産業競争力の強化サイクルモデルを検証するこ(1)H.Shinno,H.Yoshioka,S.Marpaung:“QuantitativeSWOTAnalysisonGlobalCompetitivenessofMachineToolIndustry”,JournalofEngineeringDesign,Vol.17,No.4,(2006),pp.347-356.(2)厚生労働省職業能力開発局編:「新訂版・職業能力開発促進法」,労働行政,(2002年).(3)例えば,新野秀憲:「工作機械工学の体系化(マザーマシンに関わる研究活動と将来展望)」,日本機械学会論文集(C編),Vol.79,No.808,(2013年),pp.4527-4534.(4)例えば,H.Shinno,H.Hashizume:“StructuredMethodforIdentifyingSuccessFactorsinNewProductDevelopmentofMachineTools”,CIRPAnnals–ManufacturingTechnology,Vol.51,No.1,(2002),pp.281-284.(5)PTU技能科学研究会編:「技能科学入門(ものづくりの技能を科学する)」,日科技連出版社,(2018年).と,広範な産業分野を対象に産官学連携による職業能力開発に関する研究開発を推進すること,研究対象としての職業能力開発の魅力が高まり研究者・技術者層の拡大が進展すること,を祈念している。しんの ひでのり略歴1979年4月東京工業大学工学部 生産機械工学科 卒業1984年3月東京工業大学大学院 理工学研究科 博士後期課程 修了1984年4月通商産業省(現 経済産業省)入省1985年4月同上 超先端加工技術特別研究室(併任)1987年4月東京工業大学 工学部生産機械工学科 助手1989年4月東京工業大学 工学部生産機械工学科 助教授1991年10月 一橋大学 商学部(併任)1999年10月東京工業大学 精密工学研究所精機デバイス部門 教授1999年10月東京工業大学大学院 総合理工学研究科1999年11月東京工業大学 研究戦略室 研究企画官(主務)2000年12月国立研究開発法人 産業技術総合研究所 マイクロ・ナノ機専門分野:工作機械工学,超精密加工学,設計方法論所属学会:日本学術会議、国際生産工学アカデミー(CIRP)、日本機械学会-4-工学博士(東京工業大学)工業技術院 機械技術研究所 機械部精密機械システム専攻・メカノマイクロ工学専攻 教授(兼担)能広域発現センター 主任研究員(併任)2012年4月東京工業大学 精密工学研究所 副所長2014年4月東京工業大学 精密工学研究所 所長2016年4月東京工業大学 評議員2019年4月東京工業大学 すずかけ台図書館長2020年4月東京工業大学 名誉教授 現在に至る2020年4月株式会社 牧野フライス製作所 常勤顧問(ExecutiveAdvisor)2021年4月職業能力開発総合大学校 校長 現在に至る6.結 論

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