2022年2号「技能と技術」誌308号
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図9 鉱石検波器による整流現象の検証図10 研磨面の粗さによる検波性能の比較図11 サンプル(産地)による検波性能の比較図8 自作した鉱石検波器と方鉛鉱あてる構造ではなく,黄銅鉱(8)や班銅鉱(13)など別の金属と接触させることで,検波性能が得られるという。紅亜鉛鉱は,米国以外の産地がない希少鉱石であって,方鉛鉱や黄鉄鉱と比較すると入手がやや難しい(図6)(8)。紅亜鉛鉱には人工的なものもあり,これはポーランド産として市場に出回っている(22)(図7)。接触針は,文献によって最適とされるものが異なる例が散見される。金属であれば種類は問わないとされつつも,ニッケル線(9)(10)(13)や銅線(9),鉄線(9),タングステン線(8)などが挙げられている。また,マンドリンかバイオリンのEスチール線を用いるとよいとする文献もある(18)。筆者らも,銅,鉄,アルミニウム,銀,白金等,各種の金属で試行したが,タングステンの針で,安定した性能を示すことを確認した。今回自作した鉱石検波器を図8に示す。鉱石検波器の整流特性を検討するため,ファンクションジェネレータに鉱石検波器と負荷抵抗(1MΩ)を直列に接続し,入力電圧として100mVp-p,1.0kHzを与えたときの負荷抵抗の端子電圧を測定した。その結果を図9に示す。同図より負の電圧が出力されていないことから,逆方向電圧が阻止されており,整流作用が生じていることが確認できた。しかし,前述のとおり鉱石検波器の動作は極めて不安定であり,継続的な使用にあたっては繊細な調整が必要となる。一部の文献には,鉱石表面を研磨したものよりもへき開面をそのまま使用するほうがよいという記述がある(18)。一方で,筆者らの実験では,鉱石表面を紙やすりにて研磨した場合,やすりの番手によって検波性能が異なる傾向があることが確認できた。やすりの番手を変えた場合の鉱石検波器の電流-電圧特性(以下,I-V特性という)を図10に示す。このグラフは,半導体アナライザDCA75(PeakElectronicDesign)を用いて,測定したものである。この結果より,番手が小さいほど(すなわち表面が粗いほど)順方向特性は向上する様子が確認できる。その一方,逆方向を阻止する性能は,番手が大きいほど(表面が平滑であるほど)性能が向上することが確認できる。以上の結果を総-28-合的に検討すると,800番程度のやすりで研磨したものが,最も検波器として優れていると考えられる。また,番手が大きく,表面が平滑であるほど,風や振動の影響を受けやすく,検波器としての安定性が低下する様子が確認できた。したがって,鉱石表面

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