2022年2号「技能と技術」誌308号
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島根職業能力開発短期大学校 岩本 智美これまでものづくり産業では,「キツイ・汚い・危険」のいわゆる3Kの負のイメージが先行することに加え,男性中心の業界であるというイメージから,女性の職業としての選択肢になりづらく,女性労働力の活用は少なかった。現在の日本は少子高齢化が急速に進展した結果人口減少時代を迎え,労働生産人口が減少している。すべての産業界と同様に,製造業や建設業といったものづくり産業でも労働力の不足感は強く,この労働力不足解消には,女性を含めた多様な人材の活用が重要である。近年の「働き方改革」によって,多様かつ柔軟な働き方を実現する人材活用や,福利厚生の見直しなどにより働きやすい環境が整備されつつあること,職種の多様化により女性が活躍できる場が増えたこと等から,ものづくり産業において「ものづくり女子」と呼ばれる,ものづくりの現場に携わる女性の数は増加傾向にある。今後,ものづくり業界では,女性特有の発想や細やかな気配り等を大いに生かして,女性がますます活躍することが期待されている。島根職業能力開発短期大学校(以下「当校」という)は,ものづくりに携わる人材を育てる工科系短期大学校である。当校では,ここ数年女子入校者数が増加の傾向にあるが,それでも全学生数の二割に満たないのが現状である。女子学生をものづくり女子としてものづくりの現場に送り出すためには,少数派である女子学生が安心して勉強に取り組むことができ,満足度の高い二年間の学校生活を送れるこ-13-とが重要である。そのためには適切なケアが必要であると考え,当校では平成30年度に「女子会」を発足,女子学生を対象にしたあらゆる支援の場として活用し,女子学生の満足度向上に努めている。本テーマでは,今年で四年目を迎えた女子会について,これまでの活動とその効果について述べることとする。当校には,生産技術科,電子情報技術科,住居環境科の三科が設置されており,令和3年度入校生の定員は生産技術科15名,電子情報技術科20名,住居環境科20名の合計55名である。令和3年度の入校者数は50名で,平成28年度から続いた徐々に増加傾向から減少に転じたが,入校生に占める女子学生の割合は,過去8年間で最も少ない平成27年度の2.5%から13.5ポイント増加し,16.0%であった。(表2-1,図2-1)しかしながら,まだまだ女子学生が少数派であることがわかる。文部科学省の学校基本調査によると,大学入学者のうち工学部への入学者数が徐々に減少する中で,工学部への女子入学者数は増加しており,全国的にみても工学部を志す女子学生が増えている。(図2-2)当校の女子入校者のほとんどは建築系の住居環境科に所属している。建築は,人間の暮らしに欠かせない「衣食住」の一つ「住」について学ぶため,工学部の他科と比べてより身近であり,その必要性を認識しやすく,設計やインテリアなど女性が興味を持ちやすい分野も多いことから,女子入校者数が多いと考えられる。1.はじめに2.島根職業能力開発付短期大学校の入校状況職業能力開発と学生支援のための女子会の取り組みについて

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