2022年1号「技能と技術」誌307号
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東京電機大学 酒井 則男,五味 健二コロナ禍における授業の一形態としてオンラインなどの遠隔授業が要求されてきた。ただし,特に実験を伴う授業でのそれは特段の工夫が必要と考えられるが,遠隔授業のネガティブ要素にとらわれていては遠隔授業の本質を見誤りかねない。本稿では遠隔のポジティブ要素,例えば「動画は複数回視聴できる」を,いかにして「複数回視聴させる」とできるか工夫するなど,遠隔にしかない強みを最大限発揮する試みを行いその効果を評価した。2.1 授業概要東京電機大学工学部機械工学科では,新型コロナウイルス感染症(COVID-19)対策のため,2020年度前期の授業は遠隔で行い,疲労き裂の破壊力学実験(以下,「疲労き裂実験」という)をつうじて,具体的な遠隔授業の取り組みを本誌(2021年1号Vol.56)で報告した。2021年度前期の授業も引き続きその感染防止対策を講じ,全在校生を学籍番号の奇数と偶数の2グループに分割し,原則,指定された週に1/2の分散登校を行い,「対面」と「遠隔」の授業を同時進行で実施した。図1に対面と遠隔の授業形態を示す。対面授業を行いながら同時に実験の様子をライブで配信する「ハイブリッド型」(図1右上)授業の導入を検討し-7-たが,両方の授業を平行して行う必要があるため,安全を確保しながら授業を実施することが難しいと判断した。そこで,登校日の学生は「対面」(図1左上)で,非登校日の学生は「オンデマンド型」(図1右下)の授業を同時進行で行った。2.2 対面授業(登校学生)学校に登校する学生は,対面授業を受講する前ま でに,ICT(Information and Communication Technology) 教材の動画を使って「反転授業」による事前学習を行う。反転授業とは,「説明型の講義など基本的な学習を宿題として授業前に行い,個別指導やプロジェクト学習など知識の定着や応用力に必要な学習を授業中に行う教育方法」2)である。2.3 オンデマンド型授業(非登校学生)非登校日の学生はオンデマンドで受講し,ICT教材の動画を使って学習する。図1 対面と遠隔の授業形態1)1.はじめに2.授業形態コロナ禍における動画教育を工夫した機械工学実験

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