2022年1号「技能と技術」誌307号
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表5 AR手順書の適用が効果的な作業表6 AR手順書の適用が難しい作業図9 意見聴取の様子を使用するメリットは以下の3つある。①視線や手元などの動作を最小限にすることができる②アイトラッキング機能を使うことで作業者の視線を感知し,視線による動画の再生やページをめくることができる③作業者が手順書の位置を自由に調整でき,頭を動かすと追跡して表示することができるなお,HoloLens2は本制作で使用した「QRコード」以外に,「Azure Object Anchors」,「円形コードアンカー」,「ホログラフィックアンカー」をアンカーとして利用できる。5.6. 考察本制作で実施した比較検証からAR手順書を使ったスキル習得に効果的な作業と適用が難しい作業があることが分かった。表5に効果的な作業を,表6に難しい作業を示す。表5内のある程度の大きさとは作業対象物をアンカーとする「ホログラフィックアンカー」の場合,1[m3]程度の大きさが必要となる。6.1. 制作テーマの設定総合制作実習は1年間かけてPDCAサイクルを回し,発表まで行うものづくりの一連の流れを経験できる。この貴重な時間を学生のモチベーションを高-5-く維持し,より良い経験をさせることができるかは指導員のテーマ設定次第ともいえる。指導員の一存で決めたテーマの場合,学生からすると「やらされている実習」になりかねない。そこで本制作では学生が「やってみたい」と思えるようなテーマになるように学生と時間をかけて話し合いをし,テーマ設定した。6.2. 目的および目標設定授業のカリキュラムでも目的や訓練目標があり,それを達成できるように訓練項目がある。総合制作実習においても「なぜそれをつくる」という目的と,「制作するもの」という目標を設定する。これは指導員が学生の能力に応じて設定する必要があり,学生のスキルの習得意欲の向上や実習に取り組むモチベーションを維持につながると考える。また,目標に細分化し,段階的に取り組むことで1つ1つ達成していくことも重要である。ただ,設定した目標が必ず達成できるとは限らない。原因としては実習の進捗や学生の能力によるところが大きい。そのときは当初設定した目的や目標の方向性は変えずに,新たに設定しなおすことで解決できると考える。6.3. 企業との関わり図9に意見聴取の様子を示す。本制作では,関連企業の方に制作物に対する意見をいただいた。学生にとっては企業目線の意見や考え方を知り,後述の「コミュニケーション能力」を身につけることができる。また,学生生活だけではできない企業との人脈をつくる機会はとても貴重である。6.学生指導のポイント

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