2022年1号「技能と技術」誌307号
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ポストコロナと言えどもCOVID-19そのものは未だに継続中の社会問題である。その問題以外にも危惧される社会的な環境変化があると感じているので,その点についても少し述べてみたい。5.1 変化する社会環境と人材の確保話は少し横道にそれるが,令和元年から経産省の産業保安グループ電力安全課で「電気保安体制を巡る現状と課題」と言う資料の中で将来的な電気保安人材不足の可能性を示唆し,電気主任技術者試験や認定資格を得るオンライン学習制度の構築などが検討されている。現に令和4年度から第3種電気主任技術者試験が年2回受験できるようになった。現状日本における電気主任技術者の4割は60才以上なのである。紹介した電気保安人材・技術WGの資料を見ていただければ分かることだが,それだけ技術者の不足が懸念されているということである。これは電気主任技術者に限ったことではないと私は見ている。話を元に戻すが,そのように技術者が全般的に不足するという社会現象の中でCOVID-19は起きた問題だと見ており,SDGsや温暖化対策としての電力化推進,5G時代も相まってスマート化やAIの推進等で技術者の需要はむしろ増加傾向にある。ポストコロナにおける人材育成を考えるときに,COVID-19だけでなく,社会環境や情勢も考慮しなければならない。技術者の需要は増えるがその数は減少傾向にある中,企業としてES(従業員満足度)の向上も考慮しなければ,育てた人材は流出し常に未経験の新人を現場に入れることになり,現場力・企業力の低下は免れないだろう。5.2 これからの技術スタッフに求められるスキル人口動態調査でも明らかなように,今後の日本においては若い世代の人口は減少傾向にある。それを日本中の企業や会社で取り合うことを想像すると,ただでも技術離れの傾向にある設備関連企業はどうなるのだろうか。当然企業も少人数でも対応できる-19-ように設備管理の刷新やロボット,AIなどの導入等を考えていることだろう。そこで重要になるのは従業員一人ひとりのスキルである。労働集約型の場合はある程度人数でカバーできた部分も,限られた人材で同量もしくはそれ以上の業務を消化するとなると,一人当たりの業務量が当然増大してくるはずである。そうなればある程度機械管理やAIの導入ができたにせよ,それを管理する者は優れた人材である必要性を感じる。結果的に幅広く高いスキルが求められることになるだろう。設備管理であれば単に設備全般の理解にとどまらず,スピーディーで的確な業務遂行,委託先等の打ち合わせや交渉に至るまで熟せるような人材である。資格の取得や教育においても,その養成に時間的な効率を求められるだろう。企業や教育担当部署はこれからの変化する社会環境や情勢を常に見据えながら,フレキシブルな教育方法による人材の育成とそれを生かす企業風土の醸成,また育てた人材に対するESに配慮しなければ成長を望めないと思うが,教育や求人,就労に関わる方々はどう見ておられるのだろうか。人の移動や集合,接触機会の回避策として利用を始めた通信教育的社内教育だが,集合教育ができるようになっても,この機会で得た利点を活用したいと考えている。具体的には,テキストを既に配布しているので,集合教育当日は予習を前提とした研修を実施,研修の主体は受講者個人の学習で,設問形式の研修レポートへの回答を行い,回答例を渡した後,受講者自身でチェックする。間違った回答や考え方の相違について考え,復習してもらうが,その際グループ単位でも良いし,他の受講者と相談することも良しとする。最後に解説書を渡して,研修後さらに復習や理解を深めるための参考としてもらう。従来行っていた,一方通行の伝えるだけの研修は排除し,コミュニケーションをとりながら行う教育に徹したいと今も教育方法のさらなる改善に向けて5.ポストコロナと社会的な環境変化への対応6.おわりに

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