2022年1号「技能と技術」誌307号
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九州メンテナンス株式会社 施設管理部 技術顧問 吉竹  司2020年の初頭より始まった新型コロナウイルス感染症(以下COVID-19と記載)も昨年は猛威を振るい,国内でも多方面にわたり大変大きな影響を及ぼしながら,現在もなおその状況下にある。福岡を中心に九州一円で,清掃業・設備管理業・警備業と総合的にビルメンテナンス業を営む弊社にとっても同様であり,多くの従業員を抱えサービスを提供する労働集約型産業であるが故に感染防止や勤務体制の維持,教育等に関して社内的にも社外的にも苦慮してきた。ここでは弊社における技術スタッフの研修や教育について,COVID-19流行後から現在に至るまでの対応や新たな取り組み,その効果などについて述べてみたいを思う。2.1 従来の教育体系とその目的弊社における技術スタッフの教育は大きく分けて,社内教育と社外教育の2本立てとなっている。従来,社内教育は集合教育を主体としており,「新人教育」や建築物衛生法に関わる「空調給排水管理従事者研修」,電気主任技術者や中堅スタッフに的を絞った「若手育成研修」,警備兼務者には警備業法に基づく「新任教育」や「現任教育」などがそれに該当する。社外教育の多くは業務上必要な資格や教育修了証-15-を得るために実施しており,関連法規に基づく広範囲なものとなっている。(末尾7.1を参照)また教育目的という観点では,社内教育は技術スタッフの知識や技量を向上させ育成するものであり,社外教育は業務に必要な法的根拠に基づく人的要件の整備と考えている。したがって社内における人材育成(技術スタッフの養成)という点では社内教育(Off-JT+OJT)が非常に重要なファクターであると言える。2.2 COVID-19が与えた教育への影響さて2020年初頭から始まったCOVID-19の感染拡大は全社的に教育体系を大きく崩すこととなった。教育や研修に携わる多くの方々が経験していることだろうが,受講者の感染リスクを増大させることへの懸念がその最大の理由である。社外教育においても主催者側からの相次ぐ延期や中止の連絡により,教育計画自体が総崩れの状態となっていった。最も懸念されたことは業務を維持継続するために必要な資格と教育修了証の取得や更新であったが,それぞれの関係機関が感染状況を考慮され,柔軟に対応できたことで一時的に解消できた。その後,コロナ禍における教育の在り方をどう対処すれば良いのか,今後もこの状況が続くことや他の要因で起こり得る社会現象にも対応できるような新たな教育体制の構築を考える必要があった。そこでCOVID-19がもたらした現状を再度分析し,できることを模索した。まず抑えるべきは教育体制の維持を困難にしたコロナ禍での究極の要因で,それは「人の集合と接1.はじめに2.コロナ禍での社内教育の取り組みについてポストコロナを見据えた技術スタッフの育成―_社会環境に対応する社内教育と人材育成について_―

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